STカコモン — 言語聴覚士国家試験 過去問・解説

第26回 言語聴覚士国家試験 第36問

音声学第26回
[ɯ]の後舌面の位置を上げたときの音はどれか。
  1. 1.[o]
  2. 2.[w]
  3. 3.[u]
  4. 4.[x]
  5. 5.[ɤ] ✓

正答:5番

解説
■ 正答:5番 — [ɤ] [ɯ]は「中舌、後部、非円唇、高さは中高」の母音です。この音の舌面を上げると(舌高が高くなると)、舌の位置がより上方に移動し、「後舌、後部、非円唇、高さは高」となり、これが[ɤ]です。舌の高さ(vowel height)の調整が音声学での最重要操作となります。 --- 【各選択肢の解説】 1. [o] ❌ 誤り。[o]は「後舌、後部、円唇、高さは中」の母音です。[ɯ]から舌面を上げた場合、円唇性が追加されるはずですが、[ɯ]は非円唇のままです。また舌の後退度も異なります。 2. [w] ❌ 誤り。[w]は「半母音(滑音)」であり、母音ではなく子音です。舌面を上げるという操作で、子音が生じることはありません。音素の分類レベルでの誤選肢です。 3. [u] ❌ 誤り。[u]は「後舌、後部、円唇、高さは高」の母音です。[ɯ]から舌面を上げた場合、高さは上がりますが、円唇性(丸める)という別の操作が必要になるため、単に「舌面を上げた」だけでは[u]には至りません。 4. [x] ❌ 誤り。[x]は「軟口蓋摩擦音」であり、子音です。舌面を上げる操作は母音の特性変化を指すため、子音が答えになることはありません。 5. [ɤ] ✅ 正しい。[ɤ]は「後舌、後部、非円唇、高さは高」の母音です。[ɯ](中高)から舌面を上げると、舌高が「高」に変わり、他の特性(後舌・非円唇)は保持されるため、[ɤ]が得られます。 --- 【試験対策ポイント】 母音の舌位置 4つの軸 | 軸 | パラメータ | 例 | |---|---|---| | 前後(Backness) | 前舌 ↔ 後舌 | [i]前 vs [ɯ]後 | | 高さ(Height) | 高 ↔ 低 | [i]高 vs [a]低 | | 円唇(Rounding) | 円唇 ↔ 非円唇 | [u]円 vs [ɯ]非 | | 舌根位置(Root) | 前進 ↔ 後退 | 微調整 | 問題解法の手順 1. 基準音[ɯ]の特性を4軸で記述 2. 「舌面を上げた」=「高さ」軸のみ変更 3. 他の3軸は不変のまま探す 4. 変化前後を表で比較 [ɯ] → 舌面↑ → [ɤ] 中高・後舌・非円唇 → 高・後舌・非円唇 紛らわしい選択肢 - [u]と[ɤ]の区別:「円唇」vs「非円唇」が決め手(IPA表では左が非円唇、右が円唇) - 子音[w][x]:舌位置の操作では「母音→母音」または「子音→別の子音」の変化しか起きない。問題で母音からスタートしているなら答えは母音に限定 IPA(国際音声記号)での舌位置図 - 横軸:前←→後 - 縦軸:高←→低 - [ɯ]は右上のやや下(中高) - [ɤ]は右上(高)
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