第28回 言語聴覚士国家試験 第135問
音声学第28回
音素について正しいのはどれか。
- 1.異音の中の一つが音素である。
- 2.音素と別の音素は相補分布する。
- 3.語の区別をする機能を持っている。 ✓
- 4.異音が変化したものが音素である。
- 5.多くの言語で使われる標準的な分節音である。
正答:3番
解説
■ 正答:3番 — 語の区別をする機能を持っている。
音素(phoneme)とは、ある言語において「意味を区別する働きを持つ最小の音声単位」のことであり、音声学・言語学における基礎概念です。
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【各選択肢の解説】
1. 異音の中の一つが音素である。
❌ 誤り。音素は、複数の「異音(allophone)」をまとめた抽象的なカテゴリー(グループ)です。特定の具体的な音声(異音)そのものが音素になるわけではありません。
2. 音素と別の音素は相補分布する。
❌ 誤り。相補分布(現れる環境が決して重ならないこと)を示すのは、同じ音素に属する異音同士です。例えば、日本語のハ行子音音素 /h/ の異音である [h](ハ・ヘ・ホ)、[ç](ヒ)、[ɸ](フ)は相補分布します。異なる音素同士は、同じ環境に現れて意味を区別する「対立」の関係にあります。
3. 語の区別をする機能を持っている。
✅ 正しい。これが音素の定義そのものです。例えば、「パン(/pan/)」と「バン(/ban/)」において、/p/ と /b/ を入れ替えることで語の意味が変わります(ミニマル・ペア)。この意味を区別する機能が音素の最大の特徴です。
4. 異音が変化したものが音素である。
❌ 誤り。概念の順序が逆です。一つの抽象的な「音素」が、前後の音などの音声的環境の影響を受けて、実際に発音される際に異なる音声として現れたものが「異音」です。
5. 多くの言語で使われる標準的な分節音である。
❌ 誤り。音素の体系は言語によって全く異なります。ある言語で意味を区別する「音素」であっても、別の言語では単なる「異音」に過ぎないことがよくあります。例えば、英語の /r/ と /l/ は意味を区別する別の音素ですが、日本語では同じラ行音素 /r/ の異音として扱われます。
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【試験対策ポイント】
音素・異音・相補分布の関係:
| 概念 | 内容 |
|------|------|
| 音素(phoneme) | 意味を区別する最小の抽象的音声単位 |
| 異音(allophone) | 同一音素が環境によって異なる音として現れたもの |
| 相補分布 | 異音同士が同じ環境に現れない関係 |
| ミニマル・ペア | 1音素だけ異なり意味が変わる語の対(例:パン/バン) |
音素の定義「意味を区別する最小単位」は頻出。異音との上下関係(音素が上位カテゴリー、異音が具体的実現)を整理しておく。