第28回 言語聴覚士国家試験 第141問
聴覚心理学第28回
聴覚フィルタの説明として誤っているのはどれか。
- 1.内耳の基底板の振動特性が生理的基盤となっている。
- 2.中心周波数が高いほど帯域幅が狭くなる。 ✓
- 3.音圧レベルが上昇すると帯域幅が広くなる。
- 4.周波数-利得関数の傾斜は低域側より高域側で急変になる。
- 5.感音難聴者の帯域幅は健聴者より広くなる。
正答:2番
解説
■ 正答:2番 — 中心周波数が高いほど帯域幅が狭くなる。
聴覚フィルタ(auditory filter)は内耳(基底板)の周波数分析機能を説明するモデルで、**中心周波数が高いほど帯域幅は広くなる**(相対的に見れば狭く見えるが、絶対帯域幅は広くなる)。帯域幅と中心周波数の比(相対帯域幅)は周波数にほぼ独立しており、これがERB(等ラウドネス帯域幅)の概念に関連しています。
---
【各選択肢の解説】
1. 内耳の基底板の振動特性が生理的基盤となっている。
✅ 正しい。聴覚フィルタの生理的基盤は基底板(basilar membrane)の周波数選択性にあり、異なる周波数に対して異なる部位が最大振幅を示す周波数チューニング曲線で説明されます。
2. 中心周波数が高いほど帯域幅が狭くなる。
❌ **誤り。これが正答です。** 実際には中心周波数が高いほど帯域幅(Hz単位の絶対値)は**広くなります**。例えば、1kHzの帯域幅は約100Hzですが、8kHzの帯域幅は約900Hz以上になります。ただし、相対帯域幅(帯域幅÷中心周波数)はほぼ一定です。
3. 音圧レベルが上昇すると帯域幅が広くなる。
✅ 正しい。音圧レベルが上がるにつれて聴覚フィルタの帯域幅が広くなる現象を「フィルタ幅の展開」と呼びます。これは基底板の非線形特性によるもので、高音圧では周波数選別性が低下します。
4. 周波数-利得関数の傾斜は低域側より高域側で急変になる。
✅ 正しい。聴覚フィルタの周波数-利得関数(frequency response)は、中心周波数の高域側(上の傾斜)で急峻に立ち上がり、低域側(下の傾斜)でより緩やかです。これが**非対称な三角形状**のフィルタ形状を作ります。
5. 感音難聴者の帯域幅は健聴者より広くなる。
✅ 正しい。感音難聴(特に内耳性難聴)では有毛細胞の障害により基底板の周波数分析機能が低下するため、聴覚フィルタの帯域幅が広くなり、周波数分析能が低下します。これを「聴覚フィルタの劣化」と呼びます。
---
【試験対策ポイント】
**聴覚フィルタの核となる3つの特性:**
| 特性 | 説明 | 臨床的意義 |
|---|---|---|
| 周波数依存性 | 帯域幅は中心周波数に比例して増大(相対帯域幅はほぼ一定) | マスキング効果の周波数依存性を説明 |
| 音圧依存性 | 高音圧では帯域幅が拡大(非線形性) | ラウドネスの圧縮・聴覚補充現象に関連 |
| 非対称性 | 高域側の傾斜が急峻、低域側が緩やか | 上向きマスキング現象(低周波音が高周波を隠しやすい) |
**ERB(Equivalent Rectangular Bandwidth)**:聴覚フィルタを矩形に置き換えた等価帯域幅。Moore & Glasbergの公式で計算可能で、難聴者評価に使われます。
**出題のポイント**:帯域幅と周波数の関係は「高いほど狭い」