第28回 言語聴覚士国家試験 第140問
音響学第28回
「山田の案山子(やまだのかかし)」と発話した音声を広帯域サウンドスペクトログラムで分析した結果の説明で誤っているのはどれか。
- 1.「や」の部分にわたり音が観測される。
- 2.「だ」の部分にボイスバーが観測される。
- 3.「ま」と「の」の部分に鼻音マーマーが観測される。
- 4.「か」の部分に負のVOT が観測される。 ✓
- 5.「し」の部分に強い高周波数成分が観測される。
正答:4番
解説
# 第28回 第140問 解説
■ 正答:4番 — 「か」の部分に負のVOTが観測される。
「か」は無声破裂音(無声歯垂音)であり、声帯振動が開始する前に閉鎖が解放されるため、**正のVOT(Voice Onset Time)が観測される**のが正常です。負のVOTは有声破裂音(「が」など)に見られる特性であり、「か」では生じません。
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【各選択肢の解説】
1. 「や」の部分にわたり音が観測される。
✅ 正しい。「や」は[ja]で、半母音を含む音素です。スペクトログラムで継続的なエネルギー(フォルマント構造)が観測されます。
2. 「だ」の部分にボイスバーが観測される。
✅ 正しい。「だ」は有声破裂音[da]であり、閉鎖区間中に声帯振動が続くため、低周波数(通常50〜300Hz)に細い線状の**ボイスバー**が観測されるのが特徴です。これが無声破裂音との重要な識別特性となります。
3. 「ま」と「の」の部分に鼻音マーマーが観測される。
✅ 正しい。「ま」[ma]と「の」[no]は両者とも鼻音で、軟口蓋が挙上せず鼻腔を通じて声が放出されます。スペクトログラムでは**低い周波数に鼻音フォルマント(nasal formant)やアンチフォルマント**が観測されるのが特徴的です。特に第1フォルマントが母音に比べて顕著に低いのが鼻音の識別特性です。
4. 「か」の部分に負のVOTが観測される。
❌ **誤り。** これが正答です。「か」[ka]は**無声破裂音**であり、閉鎖の解放後に声帯振動が開始するため、**正のVOT**(破裂の解放~声帯振動開始までの時間、通常50〜150ms)を示します。負のVOTは有声破裂音(「が」[ga]など)が閉鎖中に既に声帯が振動している場合に観測される現象で、「か」では決して起こりません。
5. 「し」の部分に強い高周波数成分が観測される。
✅ 正しい。「し」[ʃi]は無声歯茎後部摩擦音で、狭い開口部を通る気流で複雑な乱流が生じ、**4000〜8000Hz以上の高周波数域に帯域状の強いエネルギー**が観測されます。この高周波数成分が摩擦音識別の重要な特徴です。
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【試験対策ポイント】
**VOT(声気間)の正負を区別することが鍵**:
| 音素タイプ | VOT特性 | 具体例 |
|---|---|---|
| 無声破裂音 | **正のVOT**(50〜150ms) | [p, t, k]→「パ、タ、カ」 |
| 有声破裂音 | **負のVOT**(−100〜0ms)またはボイスバー | [b, d, g]→「バ、ダ、ガ」 |
| 無声摩擦音 | 声帯振動なし+高周波帯域 | [s, ʃ, f]→「サ、シ、フ」 |
| 鼻音 | 低フォルマント+鼻音フォルマント | [m, n]→「マ、ナ」 |
**スペクトログラムの主要特徴**:
- **フォルマント**:母音や鼻音・流音の周波数特性(F1・F2・F3)
- **ボイスバー**:有声破裂音の閉鎖中に