STカコモン — 言語聴覚士国家試験 過去問・解説

第28回 言語聴覚士国家試験 第190問

小児聴覚障害第28回
3歳の男児。突然めまいと嘔吐が出現し受診した。ABR検査では右50dB、左20dBの反応閾値であった。既往歴に特記すべきものはない。新生児聴覚スクリーニングは両側パスであった。考えられる原因はどれか。
  1. 1.GJB2遺伝子変異
  2. 2.OTOF遺伝子変異
  3. 3.SLC26A4 遺伝子変異 ✓
  4. 4.先天性風疹感染
  5. 5.先天性サイトメガロウイルス感染

正答:3番

解説
■ 正答:3番 — SLC26A4遺伝子変異 **解説の根拠** 3歳時に**突然片側性の聴力低下**とめまい・嘔吐が出現し、新生児聴覚スクリーニング(NHS)でパスしていることが診断の決定的手がかりです。これは**進行性感音難聴**であり、特に**前庭水管拡大症(LVAS:Large Vestibular Aqueduct Syndrome)**を強く示唆します。SLC26A4遺伝子はペンドリンをコードし、内耳のイオン輸送に関与します。その変異により内リンパ液の調節異常が生じ、前庭水管が拡大し、進行性難聴とめまいを引き起こします。**NHS合格後の進行性感音難聴の最多原因がLVASです**。 --- 【各選択肢の解説】 **1. GJB2遺伝子変異** ❌ 誤り。GJB2遺伝子(コネクシン26)変異は先天性難聴の最多原因ですが、通常は**先天性で、生時から聴力低下があり、3歳時に急に難聴が出現することはありません**。NHSでリファーされているはずです。このケースは新生児期の聴力は正常であったため、GJB2変異は考えられません。 **2. OTOF遺伝子変異** ❌ 誤り。OTOF遺伝子(オトフェリン)変異も先天性難聴の原因ですが、生時から聴力低下があります。進行性ではなく、NHSで検出されるはずです。また、**めまい・嘔吐などの前庭症状は特徴的ではありません**。 **3. SLC26A4遺伝子変異** ✅ 正しい。**Pendrin遺伝子変異により前庭水管拡大症(LVAS)が引き起こされます**。内リンパ液産生・吸収のバランス異常により、内リンパ水腫が進行します。特徴: - NHSは合格(新生児期の聴力は保たれている) - 2〜10歳の乳幼児期に**突然の片側性難聴が出現** - **前庭症状(めまい・嘔吐)の合併**が特徴的 - 聴力低下が進行性である 本症例はすべての特徴に合致します。 **4. 先天性風疹感染** ❌ 誤り。先天性風疹症候群では両側感音難聴(高度~重度)が新生児期から存在します。**NHSでリファーされていることが必須**です。また、進行性ではなく、3歳時の突発的な悪化は特徴的ではありません。白内障・心疾患(PDA)・小頭症など他の奇形を伴う場合が多いです。 **5. 先天性サイトメガロウイルス(CMV)感染** ❌ 誤り。先天性CMV感染は先天性難聴の最多**非遺伝性原因**ですが、新生児期から難聴が存在し、**NHSで検出されます**。3歳時に新たに難聴が出現することはありません。本症例のようなNHS合格後の進行性難聴の原因にはなりません。 --- 【試験対策ポイント】 **■ 「NHS合格後の進行性感音難聴」は前庭水管拡大症(LVAS)を最優先に考える** このパターンの問題では、以下の鑑別が重要です: | 原因 | 発症時期 | 聴力の性状 | 前庭症状 | NHS結果 | |---|---|---|---|---| | 先天性GJB2変異 | 出生時から | 非進行性(通常) | なし | リファー | | 先天性感染(CMV・風疹) | 新生児
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