第28回 言語聴覚士国家試験 第57問
失語症第28回
「桜はどれですか」と聞かれて「さくらはどれですか」と言い、カエルの絵を指さすという反応から考えられるのはどれか。
- 1.読解の障害がある。
- 2.意味性錯語がある。
- 3.語音認知が低下している。
- 4.単語の意味理解障害がある。 ✓
- 5.聴覚的把持力が低下している。
正答:4番
解説
# 第28回 第57問 解説
■ 正答:**4番 — 単語の意味理解障害がある。**
患者は聴覚的には「桜」という音声を正確に捉え、それを復唱することもできています(「さくらはどれですか」と正確に言い返している)。しかし**「桜という言葉の意味(花の種類)を理解していないため、全く関係のないカエルの絵を指さしている**という反応パターンです。これは意味理解の障害を示す典型的な事例です。
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## 【各選択肢の解説】
**1. 読解の障害がある。**
❌ 誤り。この問題は**音声による聴覚的提示**であり、読む行為を伴いません。読解障害(失読)の評価ではなく、音声理解の評価です。
**2. 意味性錯語がある。**
❌ 誤り。意味性錯語は「**言い間違い**の時点で意味的に近い別の語を生じる現象」(例:「みかん」の代わりに「りんご」と言う)です。本症例は「桜」と正確に言えているため、錯語は生じていません。
**3. 語音認知が低下している。**
❌ 誤り。「語音認知低下」とは**音声そのものの聞き分けが困難**な状態を指します。本症例では「さくらはどれですか」と質問をそのまま復唱できているため、音声の認知・聞き分けは保たれています。
**4. 単語の意味理解障害がある。**
✅ 正しい。患者は「桜」という**音を正確に認知し復唱もできるが、その言葉が指す概念(花の一種)の意味を理解していない**ため、無関係な物体を指してしまっています。これが「語義失語」「語意喪失」と呼ばれる状態であり、側頭葉後下部や角回の損傷で見られます。
**5. 聴覚的把持力が低下している。**
❌ 誤り。聴覚的把持力(auditory retention span)の低下があれば、**長めの文の復唱ができない、または途中で忘れる**という現象が起こります。本症例は質問全体を正確に復唱できているため、把持力は保持されています。
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## 【試験対策ポイント】
### 意味理解の障害を見極めるキーポイント
本問は**「音の認知」「言語産出」「意味理解」の3要素を区別する**良問です。
| 段階 | 機能 | 本症例の状態 |
|---|---|---|
| ①音声認知 | 聞こえた音を脳が認識 | ✅ 保持(「さくら」と復唱可能) |
| ②意味理解 | 音が指す概念を理解 | ❌ 障害(カエルを指す) |
| ③言語産出 | 意思を表現 | ✅ 保持(「さくらはどれですか」と発話) |
### 失語症分類での位置づけ
- **命名失語(失名辞)**:物を見ても名前が出てこないが、聞くと意味が分かる
- **語義失語**:その言葉の**音は認識できても意味が分からない**(本症例)
- 音韻性錯語:音の形が変わる
- 意味性錯語:別の語に変わる
### 臨床での応用
患者に「『桜』はバラのような花ですか、それとも春に咲く日本の花ですか?」と**選択肢による意味確認**を行うことで、**意味理解障害を追認**でき、その後の訓練方針(シソーラス活用・関連語彙の結びつけ)を決定できます。