第15回 言語聴覚士国家試験 第142問
言語学第15回
日本語の表記について適切なのはどれか。
- 1.「お」と「を」とは音韻的対立を示すことがある。
- 2.「打つ」と「撃つ」とは同音異義語である。
- 3.漢字の音と訓とは同一形態素を表さない。 ✓
- 4.「出鱈目(でたらめ)」のような当て字も単字で形態素を表わす。
- 5.訓よりも音のほうが自由形態素を表わすことが多い。
正答:3番
解説
■ 正答:3番 — 漢字の音と訓とは同一形態素を表さない。
漢字の音(おん)と訓(くん)は、同じ漢字であっても異なる形態素を表します。例えば「生」の音読み「セイ」と訓読み「い-る」「う-む」「い-きる」は別々の形態素です。形態素とは「意味を持つ最小単位」であり、音と訓は発音・意味が異なるため、同一形態素ではなく別の形態素として機能します。
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【各選択肢の解説】
1. 「お」と「を」とは音韻的対立を示すことがある。
❌ 誤り。現代日本語では「お」と「を」は音韻的対立を示しません。「を」は本来「ウォ」に近い音でしたが、現代日本語では「お」と発音が合一しており、音韻的な区別がありません。表記上の違いに過ぎず、音韻体系における対立ではないのです。
2. 「打つ」と「撃つ」とは同音異義語である。
❌ 誤り。同音異義語は「同一の音形で異なる意味を持つ語」ですが、「打つ」と「撃つ」は異なる文字表記を持つ異字同訓語です。同じ音「うつ」で書き方が異なるため、同音異義語の定義には該当しません。
3. 漢字の音と訓とは同一形態素を表さない。
✅ 正しい。同じ漢字「生」でも、音読み「セイ」と訓読み「い-きる」は全く異なる形態素です。形態素は意味を持つ最小単位であり、音と訓は意味が異なるため、同一形態素ではなく別の形態素として機能します。
4. 「出鱈目(でたらめ)」のような当て字も単字で形態素を表わす。
❌ 誤り。「出鱈目」の各字「出」「鱈」「目」はそれぞれ単独では「でたらめ」という意味を表しません。これらの文字は当て字として機能するだけで、個々の文字が形態素として意味を持たないのです。複合語として初めて意味を持つため、単字では形態素を表さないのです。
5. 訓よりも音のほうが自由形態素を表わすことが多い。
❌ 誤り。音読み(特に音韻形態素)は他の形態素と結合しやすく、複合語の構成要素になりやすい傾向があります。しかし「多い」とは言えず、訓も「手紙(て+がみ)」のように自由形態素を表すことが多くあります。訓読み由来の形態素も多数存在し、一概には比較できません。
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【試験対策ポイント】
形態素・音韻・表記の用語区別
| 概念 | 定義 | 例 |
|---|---|---|
| 形態素 | 意味を持つ最小単位 | 「猫」「走る」「-ます」 |
| 音韻 | 言語音の体系的区別 | [a]と[i]は異なる音韻 |
| 同音異義語 | 同一音形・異なる意味 | 橋(はし):橋&端 |
| 異字同訓語 | 同一訓・異なる字 | 打つ・撃つ・叩つ |
| 当て字 | 意味に関係なく音を借りた表記 | 出鱈目・馬鹿 |
重要否定知識
- 「お」と「を」は現代日本語では**音韻的対立がない**(表記上の区別のみ)
- 「打つ」と「撃つ」は**異字同訓語**であり同音異義語ではない
- 当て