第15回 言語聴覚士国家試験 第15問
臨床神経学第15回
55歳の男性。右利き。最近1週間に3回、約20分続く右の片麻痺と左眼の暗黒感が出現するため来院した。
障害動脈はどれか。
- 1.右中大脳動脈
- 2.右内頸動脈
- 3.椎骨脳底動脈
- 4.左内頸動脈 ✓
- 5.左中大脳動脈
正答:4番
解説
■ 正答:4番 — 左内頸動脈
患者は右利きで、右片麻痺(左側の脳障害を示唆)と左眼の暗黒感(左眼への血流障害)が同時に出現しています。これは左内頸動脈の狭窄・閉塞による「amaurosis fugax」(一過性黒内障)と脳梗塞の危機的な状態を示す典型的な所見です。左内頸動脈は左大脳半球と左眼動脈に血液を供給するため、この動脈の病変で両症状が同時に現れます。
---
【各選択肢の解説】
1. 右中大脳動脈
❌ 誤り。右MCAの閉塞であれば左片麻痺が生じますが、左眼の暗黒感は説明できません。眼動脈は反対側の内頸動脈から分枝するため、右MCA単独病変では眼症状は生じません。
2. 右内頸動脈
❌ 誤り。右内頸動脈の病変であれば左片麻痺(正しい)と右眼の暗黒感が生じるはずです。しかし患者の症状は「左眼」の暗黒感であり、これは矛盾しています。
3. 椎骨脳底動脈
❌ 誤り。椎骨脳底動脈系の閉塞では後循環障害となり、脳幹・小脳梗塞の症状(眩暈、複視、小脳失調など)が主体です。右片麻痺と眼症状の組み合わせは前循環障害の特徴であり、椎骨脳底動脈系には当てはまりません。
4. 左内頸動脈
✅ 正しい。左内頸動脈は左大脳半球(特にMCA領域)と左眼動脈に血液を供給します。この動脈の狭窄・閉塞により、左大脳半球梗塞(右片麻痺)と一過性黒内障(左眼の暗黒感)の両方が説明できます。
5. 左中大脳動脈
❌ 誤り。左MCAの閉塞のみであれば右片麻痺は説明できますが、左眼動脈は内頸動脈の最初の分枝であるため、MCA単独の病変では眼症状は生じません。
---
【試験対策ポイント】
脳血管解剖(重要):
| 血管 | 灌流領域(脳) | 眼動脈供給 |
|---|---|---|
| 左内頸動脈 | 左大脳半球 | 左眼動脈 |
| 右内頸動脈 | 右大脳半球 | 右眼動脈 |
| 椎骨脳底動脈 | 脳幹・小脳・後頭葉 | 供給なし |
鑑別のポイント:
- 内頸動脈病変:片麻痺+同側眼症状(一過性黒内障)の組み合わせ
- 中大脳動脈病変:片麻痺のみ(眼症状なし)
- 同側の法則:左内頸動脈 → 左眼の症状+右片麻痺
Amaurosis fugaxの臨床意義:
- 内頸動脈粥状硬化の警告信号
- 脳梗塞の前駆症状であり、早急な脳血管検査が必要
- 反復する片麻痺+眼症状 = 内頸動脈系TIA