第16回 言語聴覚士国家試験 第140問
音響学第16回
「ぱ、た、かJ の子音の識別に寄与する主な音響特徴はどれか。
a.無音区間の長さ
b.破裂区間の平均的強さ
c.破裂区間の振幅スペクトル
d.後続母音へのホルマント周波数選移
e.母音のラウドネス
1. a,b 2. a,e 3. b,c 4. c,d 5. d,e
正答:4番
解説
■ 正答:4番 — c,d(破裂区間の振幅スペクトルと後続母音へのホルマント周波数遷移)
「ぱ、た、か」は異なる調音位置(唇・歯茎・軟口蓋)を持つ無声破裂音です。これらの識別に最も重要な音響特徴は、破裂区間における周波数成分(フォルマント周波数帯での相対的エネルギー分布)と、後続母音への移行時に生じるフォルマント周波数の遷移パターン(フォルマント遷移)です。調音位置が異なれば、破裂時の共鳴腔の大きさが変わり、その結果として振幅スペクトルとホルマント遷移の特性が異なります。
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【各選択肢の解説】
a. 無音区間の長さ
❌ 誤り。無音区間(気閉期間)は調音位置によって変わりますが、弁別に最も重要ではありません。音響的には「無音」なため、その長さ自体に識別情報は含まれにくいです。
b. 破裂区間の平均的強さ
❌ 誤り。破裂区間(破裂放出時)の全体的な強度(RMS値など)は、3音ともほぼ同程度であり、識別に寄与しません。重要なのは強さではなく「周波数特性」です。
c. 破裂区間の振幅スペクトル
✅ 正しい。「ぱ」は低周波成分(唇閉鎖により大きな空洞が共鳴)、「た」は中周波成分、「か」は高周波成分が相対的に強くなります。この周波数別のエネルギー分布が調音位置の同定を可能にします。
d. 後続母音へのホルマント周波数遷移
✅ 正しい。調音位置が異なると、破裂後に母音へ移行する際のF2(第2フォルマント)遷移が特徴的です。「か」は最も大きな上昇遷移を示し、「た」は中程度、「ぱ」は小さな遷移を示します。この視覚的・聴覚的な遷移パターンが弁別に最も重要です。
e. 母音のラウドネス
❌ 誤り。後続する母音のラウドネス(知覚的な大きさ)は3音に共通であり、子音の識別に寄与しません。
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【試験対策ポイント】
調音位置の異なる破裂音の識別に関わる音響特徴
| 特徴 | ぱ(唇) | た(歯茎) | か(軟口蓋) | 識別に寄与するか |
|---|---|---|---|---|
| 破裂区間の周波数特性 | 低周波 | 中周波 | 高周波 | ✅ 最重要 |
| F2遷移パターン | 小さい上昇 | 中程度 | 大きな上昇 | ✅ 最重要 |
| 無音区間長 | 調音位置で異なる | — | — | ✗ 非重要 |
| 破裂強度 | ほぼ同程度 | — | — | ✗ 非重要 |
重要キーワード:フォルマント遷移(formant transition)・振幅スペクトル・調音位置・音響キュー