第16回 言語聴覚士国家試験 第142問
聴覚心理学第16回
マスキングについて正しいのはどれか。
- 1.白色雑音は純音をマスクする上で最も効率がよい。
- 2.加重不規則雑音は音声のマスキングには不適当である。
- 3.純音は帯域雑音でマスクすることはできない。
- 4.純音によ るマスキング効果の広がりは低周波数側より高周波数側で大きい。 ✓
- 5.マスキングはマスクする音が同時に提示されたときのみ生じる。
正答:4番
解説
■ 正答:4番 — 純音によるマスキング効果の広がりは低周波数側より高周波数側で大きい
マスキングの非対称性は聴覚心理学の重要な特性です。マスクする音(通常は白色雑音など)が高周波数の音をマスクしやすく、その効果が高周波数側により広がることが知られています。これは聴覚系の周波数分析特性に基づいており、蝸牛内での周波数選別能が関連しています。
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【各選択肢の解説】
1. 白色雑音は純音をマスクする上で最も効率がよい。
❌ 誤り。白色雑音は全周波数帯域に等しいエネルギーを持つため、特定周波数のマスキングには「効率が悪い」です。同じマスキング効果を得るなら、帯域雑音(マスク対象と近い周波数帯域の雑音)の方がはるかに効率的で、必要なエネルギーが少なくて済みます。
2. 加重不規則雑音は音声のマスキングには不適当である。
❌ 誤り。加重不規則雑音(例:ピンクノイズ)は音声周波数帯域(1000〜3000Hz)に重みを持つため、むしろ「音声のマスキングに適している」です。実際に聴力検査のマスキング雑音として使用されます。
3. 純音は帯域雑音でマスクすることはできない。
❌ 誤り。純音は帯域雑音でマスクできます。マスク対象となる純音の周波数が帯域雑音の周波数帯域に含まれていれば、マスキングが生じます。実際のマスキング測定では帯域雑音がよく使用されます。
4. 純音によるマスキング効果の広がりは低周波数側より高周波数側で大きい。
✅ 正しい。低周波数の純音がマスキングする場合、その効果は「高周波数側へ広がりやすい」という非対称性があります。つまり、低周波数で提示された音は高周波数の検査音をマスクしやすい特性を持ちます。この現象はマスキング予測(ABX法での両耳間移行減衰量計算)の基本原理です。
5. マスキングはマスクする音が同時に提示されたときのみ生じる。
❌ 誤り。マスキングには「同時マスキング(forward masking)」と「時間的マスキング」があります。時間的マスキングでは、マスク音が検査音より「先に提示されたり」「後から提示された」場合でもマスキング効果が生じます(ただし同時提示より小さい)。
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【試験対策ポイント】
マスキングの種類と特性
| 項目 | 説明 |
|---|---|
| 白色雑音 | 全周波数帯域に等エネルギー→マスキング効率は悪い |
| 帯域雑音 | 特定周波数帯域のみ→マスキング効率は良い |
| ピンクノイズ(加重不規則雑音) | 低周波重み→音声帯域に適する |
| 純音マスキング | 非対称性:低周波→高周波側へ広がりやすい |
マスキング効果の広がり方(最頻出ポイント)
- 低周波数の音がマスク音:高周波数への影響が大きい(非対称)
- 高周波数の音がマスク音:低周波数への影響は小さい
- 理由:蝸牛の周波数分析特性と内毛細胞の側方抑制機構
同時マスキング vs 時間的マスキング
- 同時マスキング:最も強い効果
- 時間的マスキング(後向き):マスク音