第16回 言語聴覚士国家試験 第44問
言語学第16回
異形態に関する説明として適切でないのはどれか。
- 1.ら抜き可能形はその一例である 。
- 2.同一音素の場合に限られる 。 ✓
- 3.屈折、派生、複合、いずれにも現れ得る。
- 4.母語話者はその音韻的違いが分かる 。
- 5.表記上区別されないこともある。
正答:2番
解説
■ 正答:2番 — 同一音素の場合に限られる
異形態(allomorph)とは、同じ形態素が音韻環境や文法的文脈によって複数の形で現れることを指します。正答2は「同一音素の場合に限られる」と述べていますが、異形態は単に音素レベルに限定されず、より広範な音韻変化や形態変化を含むため誤りです。むしろ異形態は同じ意味・機能を持つ形態素が異なる形式で実現される現象全般を指し、単に同一音素に限定されません。
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【各選択肢の解説】
1. ら抜き可能形はその一例である
✅ 正しい。「できる」の可能形で「できれる」「できた」など複数の形式が現れるのは異形態の典型例です。また日本語の敬語体系における「〜される」「〜なさる」など、同じ敬語を表す異なる形式も異形態の実例です。
2. 同一音素の場合に限られる
❌ 誤り。異形態は音素レベルに限定されません。たとえば英語の複数形「-s」「-es」「-en」、日本語の過去形「-た」「-だ」など、音韻環境によって大きく異なる形式が同じ意味を持つ場合も異形態に含まれます。同一音素という制限は適切ではありません。
3. 屈折、派生、複合、いずれにも現れ得る
✅ 正しい。屈折(時制・数など文法範疇の変化)、派生(接辞による意味変化)、複合(複合語)のすべてのレベルで異形態は現れます。例えば屈折:went(go の過去形)、派生:teacher(teach+er)、複合語の内部構造など。
4. 母語話者はその音韻的違いが分かる
✅ 正しい。異形態は音韻的に異なる実現形式であるため、母語話者はそれらを区別して聞き分けることができます。ただし意味・機能的には同じものとして認識します。この音韻的区別と意味的統一性が異形態の定義的特徴です。
5. 表記上区別されないこともある
✅ 正しい。たとえば日本語の過去形「-た」「-だ」は音韻的には異なりますが、カナ表記では「〜った」「〜だった」と表記され、表記上の区別が曖昧なことがあります。また同じ綴りで異なる発音を持つ異形態も存在します。
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【試験対策ポイント】
【異形態の定義】
同一の形態素が、音韻環境や文法的文脈に応じて異なる音韻形式で現れる現象
【具体例による整理】
| 言語 | 形態素 | 異形態1 | 異形態2 | 異形態3 | 現れる環境 |
|---|---|---|---|---|---|
| 英語 | 複数形 | -s | -es | -en | 音韻環境による(cats/dogs/children) |
| 日本語 | 過去形 | -た | -だ | - | 先行音による(書いた/読んだ) |
| 日本語 | 敬語 | -られる | -なさる | - | 文法的文脈による |
| 英語 | go(過去) | went | - | - | 不規則変化(音韻的大きな違い) |
【重要:「同一音素に限定」は誤り】
- 異形態は音素レベルを超える現象
- 音韻環境によって大幅な形式変化も包含
- went/go の例:単なる音素の違いにとどまらない例
【試験で狙われやすい部分】
- 「同一音素」という限定的説明は異形態の本質を誤解している
- 異形態