STカコモン — 言語聴覚士国家試験 過去問・解説

第17回 言語聴覚士国家試験 第185問

神経系第17回
72歳の男性。副咽頭間隙腫瘍の手術を受けた後に、嚥下障害と構音障害をきたした。挺舌時の所見を示す。麻痺している神経はどれか。
  1. 1.左舌神経
  2. 2.右舌神経
  3. 3.左舌下神経
  4. 4.右舌下神経 ✓
  5. 5.左舌咽神経
第17回第185問 図

正答:4番

解説
# 第17回 第185問 解説 ■ 正答:4番 — 右舌下神経 画像所見では挺舌時に舌が右側へ偏位しています。副咽頭間隙腫瘍の手術で舌下神経が損傷されると、同側の舌筋(内舌筋・外舌筋)が麻痺し、挺舌時に舌は患側へ偏位します。健側の舌筋(オトガイ舌筋)は正常に収縮して舌を対側前方へ押し出すため、相対的に患側へ偏るからです。本症例では右への偏位がみられるため、右舌下神経麻痺と判断できます。 --- 【各選択肢の解説】 1. 左舌神経 ❌ 誤り。舌神経は三叉神経第3枝の枝で、舌前2/3の体性感覚(触覚・温痛覚)を担当する感覚神経です。舌筋の運動支配はなく、挺舌時の偏位は起こりません。 2. 右舌神経 ❌ 誤り。舌神経は感覚神経であり、舌筋の運動支配はありません。挺舌時の偏位や構音障害を説明できません。 3. 左舌下神経 ❌ 誤り。左舌下神経麻痺であれば舌は左へ偏位します。画像では右側へ偏位しているため該当しません。 4. 右舌下神経 ✅ 正しい。舌下神経は舌筋全体の運動を支配しており、損傷により同側の舌筋が麻痺します。右舌下神経麻痺では挺舌時に舌が右(患側)へ偏位し、構音障害(特にラ行・タ行)や食塊形成不全による嚥下障害をきたします。副咽頭間隙手術での医原性損傷の典型例です。 5. 左舌咽神経 ❌ 誤り。舌咽神経は舌後1/3の味覚・知覚、茎突咽頭筋、咽頭の知覚を担当します。舌の運動支配は行わず、挺舌時の偏位は起こりません。 --- 【試験対策ポイント】 **挺舌時の偏位は患側(麻痺側)へ向かう**——これは国試頻出の最重要ポイント。健側のオトガイ舌筋が舌を対側前方へ押し出すため、相対的に患側へ偏位します。 | 神経 | 機能 | 損傷時の所見 | |---|---|---| | 舌神経(V₃) | 舌前2/3の体性感覚 | 知覚低下のみ | | 鼓索神経(Ⅶ) | 舌前2/3の味覚 | 味覚障害 | | 舌咽神経(Ⅸ) | 舌後1/3の味覚・知覚、咽頭運動 | 咽頭反射低下、嚥下障害 | | **舌下神経(Ⅻ)** | **舌筋全体の運動** | **挺舌時患側偏位、舌萎縮、線維束性収縮** | **副咽頭間隙を通る神経**:舌下神経、舌咽神経、迷走神経、副神経、交感神経幹。この部位の手術や腫瘍では下位脳神経麻痺(Ⅸ・Ⅹ・Ⅺ・Ⅻ)が起こりやすく、**Collet-Sicard症候群**(Ⅸ〜Ⅻ麻痺)として知られます。 **鑑別ポイント**: - 中枢性(核上性)舌下神経麻痺:病巣の対側へ偏位(皮質延髄路の交叉のため) - 末梢性(核・核下性)舌下神経麻痺:患側(同側)へ偏位+舌萎縮あり 末梢性では舌萎縮や線維束性収縮を伴う点も鑑別の決め手となります。
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