STカコモン — 言語聴覚士国家試験 過去問・解説

第19回 言語聴覚士国家試験 第143問

言語学第19回
下線部が形態音韻論的交替でないのはどれか。
  1. 1.ame(雨) ― amaasi(雨足)
  2. 2.nomareru(飲まれる) ― mirareru(見られる)
  3. 3.niwatori(鶏) ― hinadori(雛鳥)
  4. 4.hondana(本棚) ― hombako(本箱) ✓
  5. 5.kaihatu(開発) ― hampatu(反発)

正答:4番

解説
■ 正答:4番 — hondana(本棚) ― hombako(本箱) この問題は「形態音韻論的交替(morphophonological alternation)」の概念理解を問うています。形態音韻論的交替とは、形態素が異なる文脈(語根・接尾辞の組み合わせ)に置かれたときに音韻体系の規則によって音が変わる現象です。4番は両語とも「本+名詞」という同じ構造で、単語の複合時における通常の音韻規則(撥音便)による変化に過ぎず、形態素そのものの音の交替ではありません。 --- 【各選択肢の解説】 1. ame(雨) ― amaasi(雨足) ✅ 正しい。「ame」という形態素が単独では[a-me]ですが、「-asi(足)」と複合すると[ama-asi]となり、第2音節の/me/が/ma/に交替します。これは形態素の結合に伴う音韻規則による交替です。 2. nomareru(飲まれる) ― mirareru(見られる) ✅ 正しい。「noma-」と「mira-」は異なる語根の活用形ですが、受動接尾辞「-reru」の直前で音が変わる現象です。これは形態素が異なる文脈(受動化)において音韻規則により変化する形態音韻論的交替です。 3. niwatori(鶏) ― hinadori(雛鳥) ✅ 正しい。「tori(鳥)」という形態素が単独では[to-ri]ですが、「hina-」と複合すると[dori]と濁音化します。複合形態素の接触による音韻規則的な交替(濁音化現象)です。 4. hondana(本棚) ― hombako(本箱) ❌ 誤り。両語とも「hon(本)+名詞」の複合語で、「-dana」「-bako」は異なる後置要素ですが、「本」の直後での[n]の変化(本棚[n]/本箱[m])は**撥音便による規則的な音韻規則**です。形態素「hon」が交替しているのではなく、後続音韻環境に応じた単純な音韻規則の適用であり、形態素の構造的意味での交替ではありません。 5. kaihatu(開発) ― hampatu(反発) ✅ 正しい。「hatu」という形態素が「kai-」に先行されると[kaihatu]、「ha-」に先行されると[hampatu]と音が変わります。前接形態素による音韻環境の変化により、同一形態素が異なる音形を持つ形態音韻論的交替です。 --- 【試験対策ポイント】 形態音韻論的交替の判定基準: 項目 | 例 | 判定 ---|---|--- 同一形態素が異なる文脈で異なる音形を持つ | ame→amaasi、tori→dori | 形態音韻論的交替✅ 複合時の規則的な音韻規則(撥音便など) | hon+dana / hon+bako | 単なる音韻規則❌ 形態素の活用による音の変化 | noma-/mira-(語根活用) | 形態音韻論的交替✅ 紛らわしい点: 4番は「撥音便」という誰もが学ぶ音韻規則ですが、形態音韻論的交替ではありません。形態素「hon」自体が交替しているのではなく、後続音の影響による機械的規則だからです。一方、3番の「tori→dori」は形態素「tori」が濁音化する交替として認識する点が重要です。
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