第19回 言語聴覚士国家試験 第144問
言語学第19回
ヲ格がガ格と交替することがないのはどれか。( )内に例を示す。
a.タイ(書きたい)
b.テクレル(書いてくれる)
c.意向形(ウ╱ヨウ)(書こう)
d.可能形(書ける)
e.テアル(書いてある)
1. a,b 2. a,e 3. b,c 4. c,d 5. d,e
正答:3番
解説
■ 正答:3番 — b,c
この問題は「ヲ格目的語がガ格に交替しない文法現象」を問う言語学の基礎知識です。日本語の格交替は構文の意味的変化と密接に関わっており、動詞の文法的特性によって交替の有無が決まります。
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【各選択肢の解説】
a. タイ(書きたい)
✅ ガ格と交替する。「私は本を書きたい」→「私は本が書きたい」(能力希望の解釈で自然)。希望・欲求を表す「タイ」は典型的なガ格交替現象。
b. テクレル(書いてくれる)
❌ ガ格と交替しない。「私は兄に本を書いてくれるよう頼んだ」の構文では、ヲ格「本を」は固定したままで「本が」への交替は不可。与他・恩恵構文では受益者主語のため目的語は厳密に統制される。
c. 意向形(ウ╱ヨウ)(書こう)
❌ ガ格と交替しない。「私は本を書こう」で「本が」に変わらない。意向形は話者の行為意志を表すため、目的語は常にヲ格に固定され、主語がガ格主体となる構文では交替が起こらない。
d. 可能形(書ける)
✅ ガ格と交替する。「私は本を書ける」→「私は本が書ける」(能力可能の標準的な解釈)。可能形は主体の能力を表すため、ヲ格→ガ格交替が最も顕著な現象。
e. テアル(書いてある)
✅ ガ格と交替する。「本を書いてある」→「本が書いてある」(完了結果状態を表す受身的解釈)。テアル形は結果状態を描写するため、交替が生じる。
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【試験対策ポイント】
格交替の基本法則:
| 文法形式 | ヲ→ガ交替 | 交替の理由 | 具体例 |
|---|---|---|---|
| 可能形 | ✅ | 主体能力を強調 | 本が書ける |
| 希望タイ | ✅ | 欲求・希望解釈 | 本が書きたい |
| テアル | ✅ | 結果状態の客体化 | 本が書いてある |
| テクレル | ❌ | 受益構文=主体固定 | ※本が×,本を◎ |
| 意向形 | ❌ | 話者意志=目的語固定 | ※本が×,本を◎ |
交替が起こりやすい条件:
- 受身的・完了的な解釈(テアル)
- 主体の能力・傾向を述べる場合(可能形・希望タイ)
交替が起こらない条件:
- 受益者・恩恵受領者が主語(テクレル)
- 話者の意思・予定が中心(意向形)