第19回 言語聴覚士国家試験 第77問
音声障害第19回
64歳の男性。約1年前からのどの違和感が持続している。喉頭内視鏡所見を示す。音声治療として使われるのはどれか。【別図あり】
a.指圧法
b.硬起声発声
c.プッシング法
d.ハミング法
e.腹式呼吸による発声
1. a,b 2. a,e 3. b,c 4. c,d 5. d,e
正答:5番
解説
■ 正答:5番 — d.ハミング法、e.腹式呼吸による発声
本問は喉頭内視鏡画像から診断を推測し、その病態に適切な音声治療法を選択する問題です。約1年の慢性経過と「のどの違和感」という訴えから、**声帯ポリープ、声帯結節、または声帯萎縮などの器質的病変**が疑われます。これらの病変では、無理のない発声方法で音声治療を行い、過度な音声使用を避けることが原則です。ハミング法と腹式呼吸による発声は、いずれも **喉頭への負担を軽減し、効率的な発声を促す非侵襲的治療法**として最適です。
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【各選択肢の解説】
a. 指圧法
❌ 誤り。指圧法は頸部の筋肉緊張を緩和する補助的手法ですが、器質的病変(ポリープ・結節)の音声治療では第一選択となりません。むしろ喉頭への直接的な作用を重視する場合に限定的に用いられます。
b. 硬起声発声
❌ 誤り。硬起声(hard glottal onset)は、音声の開始時に声帯を強く閉鎖させて発声する方法であり、声帯への物理的負荷が増加します。ポリープや結節のような器質的病変がある場合、病態を悪化させる可能性があるため適切ではありません。
c. プッシング法
❌ 誤り。プッシング法(プッシング動作やグループングと呼ばれる)は、声帯麻痺による発声困難(特に呼気漏出)の改善に用いられ、声帯の内転を促す技法です。器質的病変を持つ患者には適応が限定的であり、本症例の治療法としては選択されません。
d. ハミング法
✅ 正しい。ハミング法は、鼻腔への共鳴を活用しながら「ん~」という音で発声する方法です。声帯への物理的負荷が低く、効率的な音声産生を促進できるため、ポリープ・結節・萎縮などの器質的病変がある患者の音声治療に適しています。音声の質を改善しながら負担を減らせます。
e. 腹式呼吸による発声
✅ 正しい。腹式呼吸を基盤とした発声は、胸式呼吸よりも呼気圧が安定し、喉頭への負担を軽減できます。また、十分な呼気流量を確保しながら無理のない音声産生が可能となるため、慢性的な器質的病変を持つ患者の音声治療として第一選択となります。
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【試験対策ポイント】
| 音声治療法 | 主な適応 | 禁忌・注意 |
|---|---|---|
| ハミング法 | ポリープ・結節・萎縮・痙攣性構音障害 | 鼻閉がある場合は効果限定的 |
| 腹式呼吸 | ほぼ全ての音声障害 | 基本となる治療法 |
| 硬起声発声 | 音声障害は適応外(音声失行などで使用) | 器質的病変では悪化のリスク |
| プッシング法 | 声帯麻痺による発声困難 | 音声疲労・ポリープには不適切 |
| 指圧法 | 筋緊張緩和の補助手段 | 単独では不十分 |
**診断推測のポイント**
- 1年の慢性経過+「のどの違和感」→器質的病変(ポリープ・結節)の可能性が高い
- 内視鏡画像で声帯の腫脹・隆起が見られる