第20回 言語聴覚士国家試験 第139問
音響学第20回
誤っているのはどれか。
- 1.声帯振動が早くなると基本周波数が高くなる。
- 2.声道の形状が変わるとホルマント(フォルマント)周波数が変わる。
- 3.口腔と鼻腔が音響的に結合するとアンチホルマント(アンチフォルマント)が生じる。
- 4.声帯音源波のパワースペクトルの傾きは高域に行くにつれ右上がりである。 ✓
- 5.声門体積流の時間波形は上昇よりも下溝の方が急峻となる。
正答:4番
解説
■ 正答:4番 — 声帯音源波のパワースペクトルの傾きは高域に行くにつれ右上がりである。
声帯音源波(声門体積流)のパワースペクトルは、高域に行くにつれて低下する(右下がり)のが音響学の基本知識です。パワースペクトル傾度(spectral slope)は約-12dB/オクターブの負の傾きを持ちます。つまり周波数が上がるほど、エネルギーが減少するため右下がりとなります。
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【各選択肢の解説】
1. 声帯振動が早くなると基本周波数が高くなる。
✅ 正しい。声帯の振動数が増加すれば基本周波数(F0)が上昇します。これは男性(120Hz程度)と女性(200Hz程度)、子ども(300Hz以上)の周波数差の主要因です。
2. 声道の形状が変わるとホルマント周波数が変わる。
✅ 正しい。ホルマント周波数は声道の形状(口腔・咽頭腔の容積と長さ)によって決定されます。母音の種類による違い(/a/と/i/のF1値の大きな差など)がその証左です。
3. 口腔と鼻腔が音響的に結合するとアンチホルマントが生じる。
✅ 正しい。鼻音(/m/、/n/)において軟口蓋の下降により鼻腔が音響的に結合すると、アンチホルマント(ゼロ周波数;zero frequency)が生じます。これにより特定周波数のエネルギーが減衰する特性が形成されます。
4. 声帯音源波のパワースペクトルの傾きは高域に行くにつれ右上がりである。
❌ 誤り。パワースペクトル傾度は負の傾きを持つため、高域に行くにつれ右下がりです。右上がりは誤った記述であり、これが本問の誤答です。
5. 声門体積流の時間波形は上昇よりも下溝の方が急峻となる。
✅ 正しい。声門体積流波形は非対称形を示し、下降(閉鎖相への移行)の方が上昇(開口相)より急峻です。この非対称性が音声スペクトルに豊富な高周波成分を生じさせます。
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【試験対策ポイント】
声帯音源の音響特性
| 項目 | 特性 |
|---|---|
| パワースペクトル傾度 | 負の傾き(-12dB/オクターブ)→右下がり |
| 周波数範囲 | 基本周波数から数千Hz |
| 時間波形非対称性 | 下降が上昇より急峻 |
ホルマント vs アンチホルマント
| | ホルマント | アンチホルマント |
|---|---|---|
| 成因 | 声道の共鳴 | 鼻腔の副鼻道結合 |
| スペクトル上の見え方 | ピーク(エネルギー増加) | ディップ(エネルギー低下) |
| 周波数F1,F2,F3など | 周波数零点(zero) |
頻出チェック項目
- 「右上がり」「右下がり」は傾度の符号を確実に区別する
- パワースペクトル傾度は負値が常識(高域ほどエネルギー減少)
- 鼻音のアンチホルマントは臨床的にも重要(鼻漏通検査の根拠)