第20回 言語聴覚士国家試験 第42問
聴覚心理学第20回
誤っているのはどれか。
- 1.5kHz以上のピッチは時間説で説明できる。 ✓
- 2.周期的な複合音のピッチは基本周波数が決定する。
- 3.基本周波数成分が欠落しても基本周波数に対応して聞こえるピッチをバーチャル(仮想)ピッチという。
- 4.聴神経インパルスの発火間隔がピッチを決めると考えるのが時間説である。
- 5.基底板上最大の振れ幅の位置がピッチを決めると考えるのが場所説である。
正答:1番
解説
■ 正答:1番 — 5kHz以上のピッチは時間説で説明できる。
時間説は低周波数(主に1kHz以下)のピッチ知覚に有効であり、5kHz以上のような高周波数では場所説によって説明されます。5kHz以上の高周波数では、神経インパルスの発火間隔が周期に追従できなくなるため(神経の絶対不応期の制限)、場所説が機能します。
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【各選択肢の解説】
1. 5kHz以上のピッチは時間説で説明できる。
❌ 誤り。時間説は低周波数(目安:1kHz以下)のピッチ知覚に限定されます。5kHz以上の高周波数は場所説で説明されます。神経の発火周期が追従できないため時間情報は利用不可能です。
2. 周期的な複合音のピッチは基本周波数が決定する。
✅ 正しい。周期的な複合音(例:倍音を含む複合音)は、個々の倍音成分の周波数によらず、基本周波数に対応したピッチとして聞こえます。これは心理音響学の重要な法則です。
3. 基本周波数成分が欠落しても基本周波数に対応して聞こえるピッチをバーチャル(仮想)ピッチという。
✅ 正しい。バーチャルピッチ(仮想ピッチ)は、基本周波数成分が物理的に欠落していても、その他の倍音成分(例:2倍音以上)から基本周波数に対応するピッチが知覚される現象を指します。電話通話やAM放送でよく経験されます。
4. 聴神経インパルスの発火間隔がピッチを決めると考えるのが時間説である。
✅ 正しい。時間説の基本的な考え方です。聴神経線維が周期信号に同期して発火する周期(interval timing)がピッチ知覚に寄与するとされています。神経の発火間隔が音声の周期に追従することで低周波数のピッチが認識されます。
5. 基底板上最大の振れ幅の位置がピッチを決めると考えるのが場所説である。
✅ 正しい。場所説(place theory)の中核的概念です。異なる周波数は蝸牛基底板の異なる位置で最大振幅を示し、その位置が脳に送られることでピッチが認識されるとされています。高周波数ほど卵形窓寄りで振動します。
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【試験対策ポイント】
時間説 vs 場所説:適用周波数域の峻別が出題頻出
| 理論 | 対象周波数 | 機序 | 神経基盤 |
|---|---|---|---|
| 時間説 | ~1kHz | 聴神経発火の周期追従 | 神経インパルス間隔 |
| 場所説 | 1kHz~ | 基底板の振動位置 | 周波数選別性 |
| 両説併用 | 1~5kHz | 時間説+場所説 | 両機構 |
バーチャルピッチ(仮想ピッチ)の押さえどころ
- 基本周波数「成分が欠落」している点が重要
- 聴者は基本周波数に対応するピッチを知覚(知覚的補完)
- 実際には存在しない周波数成分のピッチが聞こえる現象
5kHz以上で時間説が機能しない理由
- 神経の絶対不応期(~1msec)が周期より長い
- 例:5kHz=周期0.2msec、200μsecの周期追従は不可能
- したがって場所説が支配的メカニズムとなる