第20回 言語聴覚士国家試験 第71問
言語発達障害学第20回
3歳の知的障害の男児。簡単な言語指示の理解が可能。有意味語の表出はみられない。言語指導として適切なのはどれか。
a.手遊び歌などを通して模倣行動を引き出す。
b.物の機能的操作によって概念形成を促す。
c.色名や曜日などの理解語彙を拡大する。
d.ストーリーのある絵本の読み聞かせをする。
e.子供の身振りや指さしに応じてことばをかける。
1. a,b,c 2. a,b,e 3. a,d,e 4. b,c,d 5. c,d,e
正答:2番
解説
■ 正答:2番 — a,b,e
この児は「簡単な言語指示の理解が可能」だが「有意味語の表出がみられない」状態です。つまり受動的理解は存在するが、表出言語が全くない段階です。この発達段階では、動作模倣を通じた前言語的コミュニケーション能力の育成と、物操作による概念形成が優先されます。同時に、児の非言語的行動(身振り・指さし)に対する大人の応答的フィードバックが、表出言語の芽生えに最も効果的です。
---
【各選択肢の解説】
a. 手遊び歌などを通して模倣行動を引き出す。
✅ 正しい。有意味語がない段階では、まず動作模倣能力の獲得が前提です。手遊び歌は楽しさと注目促進を通じて動作模倣を引き出し、後の言語発出へのステップとなります。3歳知的障害児にとって適切な段階的アプローチです。
b. 物の機能的操作によって概念形成を促す。
✅ 正しい。シンボル機能(物で物を代表させる思考)の発達には、実際の物操作による具体的経験が不可欠です。スプーンで食べる、ブラシで髪をとかすなど機能的操作を通じて、物と概念の結びつきが形成され、これが語彙獲得の基盤となります。知的障害児には特に重要です。
c. 色名や曜日などの理解語彙を拡大する。
❌ 誤り。色名や曜日は「抽象的カテゴリー」であり、この児の発達段階(有意味語ゼロ)では段階を飛び越しています。まず身近な具体物(母、食べ物、おもちゃ)の指示理解から始めるべきで、抽象語の導入は時期尚早です。
d. ストーリーのある絵本の読み聞かせをする。
❌ 誤り。有意味語の表出がない段階では、ストーリーという「複合的認知負荷」を求めることは不適切です。また、受動的聴取だけでは表出言語を促進しません。この児には相互交流的なアプローチ(e)が必要です。
e. 子供の身振りや指さしに対してことばをかける。
✅ 正しい。これは応答性フィードバック(responsive parenting)の典型です。児が指さしや身振りで非言語的に意図を示した時に、大人が即座に「ワンワン、いたね」「欲しいの?」と言語化することで、行動と語彙の対応を学習させ、表出の動機付けになります。有意味語ゼロの児に最も効果的です。
---
【試験対策ポイント】
有意味語がない児への言語指導の段階性
| 発達段階 | 指導内容 | 選択肢の対応 |
|---|---|---|
| 前言語的コミュニケーション | 動作模倣・身振り・指さしの促進 | a,e |
| 概念形成期 | 物操作による具体的経験 | b |
| 初期語彙期(1語文) | 日常物の指示理解→表出 | ※この児はここに到達前 |
| 抽象語導入 | 色名・時間概念など | c は時期尚早 |
キーワード:発達的適合性(developmentally appropriate)
- 「理解がある=表出へのステップが同じ」ではない
- 有意味語ゼロの段階は、まだ動作模倣と具体物操作の段階
- ストーリーや抽象語は「受動的聴覚刺激」であり、双方向コミュニケーションを欠く
紛らわしい落とし穴
- 「簡