第20回 言語聴覚士国家試験 第72問
言語発達障害学第20回
自閉症スペクトラム障害児に対するコミュニケーション機能の学習を促通する方法でに誤っているのはどれか。
- 1.早期から他者への関心を育てる。
- 2.模倣行動から自発行動へ促す。
- 3.快や不快の感情を経験させる。 ✓
- 4.集団場面での行動を分析する。
- 5.文字や絵を手掛かりにする。
正答:3番
解説
■ 正答:3番 — 快や不快の感情を経験させる。
自閉症スペクトラム障害児のコミュニケーション機能学習では、実行機能や社会的相互作用の障害に対して段階的・構造化された支援が基本です。快や不快の感情経験は、コミュニケーション機能学習を促通する直接的な方法ではなく、むしろ個別の感覚感情反応に依存しすぎることは、般化を妨げる要因となります。一方、他者への関心育成、模倣学習、視覚的手掛かり、集団分析は、いずれも実証的なコミュニケーション支援の中核方法です。
---
【各選択肢の解説】
1. 早期から他者への関心を育てる。
✅ 正しい。自閉症スペクトラム障害児は社会的相互作用の障害を示すため、早期からジョイント・アテンション(共有注意)を含む他者への関心を育てることは、言語獲得の基盤となります。これは多くの構造化された早期介入プログラムの基本原理です。
2. 模倣行動から自発行動へ促す。
✅ 正しい。模倣能力は言語学習の重要な基盤であり、身体模倣→言語模倣→自発的使用へと段階的に進める支援は、ABA(応用行動分析)やPECS等の実証的手法に共通する原理です。
3. 快や不快の感情を経験させる。
❌ 誤り。感情経験そのものはコミュニケーション機能学習の「促通方法」ではなく、むしろ自閉症児の感覚感情反応は個人差が大きく、快不快のみを手掛かりにすると般化が困難になります。学習動機づけ(強化子の活用)は異なる概念です。
4. 集団場面での行動を分析する。
✅ 正しい。自閉症児は社会的文脈の理解が困難であるため、集団場面での行動をビデオ分析やABC分析(先行事象・行動・結果)によって詳細に分析することで、支援の具体化が可能になります。
5. 文字や絵を手掛かりにする。
✅ 正しい。視覚的支援(ビジュアル・サポート)は自閉症児の強み(視覚情報処理)を活用した証拠ベースの方法です。PECSスケジュール、視覚的構造化等は広く実践されています。
---
【試験対策ポイント】
自閉症スペクトラム障害児のコミュニケーション支援の基本原理
| 方法・概念 | 自閉症支援での位置づけ |
|---|---|
| 他者への関心育成(ジョイント・アテンション) | 基盤・必須 |
| 模倣学習(段階的促進) | 基盤・必須 |
| 視覚的手掛かり(PECSスケジュール等) | 強み活用・推奨 |
| 集団場面分析(ABC分析) | 評価・介入計画 |
| 感情経験(快不快) | 直接的手法ではない→誤り |
誤りやすいポイント:「快や不快」は「動機づけ」「強化」と混同されやすいが、コミュニケーション機能学習の「促通方法」としては適切ではありません。感情経験は二次的な結果であり、主体的方法ではありません。