第20回 言語聴覚士国家試験 第73問
言語発達障害学第20回
発達性ディスレキシア児への指導でに誤っているのはどれか。
a.漢字は意味も伴わせて教える。
b.視写の繰り返しが有効である。
c.キーワードを用いる方法は、音韻情報処理過程障害が重篤な場合に有効である。
d.二次的な学力低下を防ぐための環境調整を行う。
e.文字の要素を言語化して覚える方法(聴覚法)は、聞いて覚える経路が優れている場合に有効である。
1. a,b 2. a,e 3. b,c 4. c,d 5. d,e
正答:3番
解説
■ 正答:3番 — b(視写の繰り返しが有効である)、c(キーワードを用いる方法は、音韻情報処理過程障害が重篤な場合に有効である)
発達性ディスレキシア児の指導では「視覚的処理能力の活用」と「聴覚的補償」が基本原則です。b は視覚的アプローチばかりに頼り、c は音韻障害が重篤な場合の指導方針を根本的に誤っています。
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【各選択肢の解説】
a. 漢字は意味も伴わせて教える。
✅ 正しい。ディスレキシア児は音韻処理に困難がある場合、意味的アプローチが補償的に機能します。漢字は形態的特徴+意味を統合して学習することで、音韻頼りでない認識が可能になります。
b. 視写の繰り返しが有効である。
❌ 誤り。視写は「見たまま写す」作業であり、ディスレキシア児の根本的な問題(音韻処理障害や視覚認識異常)を改善しません。繰り返しても定着せず、むしろ失敗体験を増加させる危険があります。
c. キーワードを用いる方法は、音韻情報処理過程障害が重篤な場合に有効である。
❌ 誤り。キーワード法(例:「あ」の字形を「ベビーのようなカーブ」と覚える)は、音韻処理能力がある程度保持されている場合に有効です。音韻障害が重篤な場合は、意味的・視覚的なアプローチ(Orton-Gillingham法など)の方が適切です。
d. 二次的な学力低下を防ぐための環境調整を行う。
✅ 正しい。ディスレキシア児の自尊心低下による「学習意欲喪失→全教科成績低下」を防ぐため、音声読み上げ機能の活用、教材の拡大、試験時間延長などの環境調整が重要です。
e. 文字の要素を言語化して覚える方法(聴覚法)は、聞いて覚える経路が優れている場合に有効である。
✅ 正しい。「右上から左下への斜め線」と言語化して聴覚的に処理することで、音韻ルート以外での文字認識が可能になります。聴覚的処理が相対的に優れた児には特に有効な代償戦略です。
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【試験対策ポイント】
発達性ディスレキシアの指導原則
| 領域 | ○有効なアプローチ | ✗無効なアプローチ |
|---|---|---|
| 漢字学習 | 意味+形態 | 音読繰り返し |
| 視覚的弱さへの対応 | 言語化・聴覚化 | 視写反復 |
| 音韻障害が重篤な場合 | 意味・形態処理 | キーワード法 |
| 全体的対応 | 環境調整 | 個別訓練のみ |
紛らわしい選択肢の区別
1. b と e の関係
b は「視覚入力のみ」で認識を図る(無効)
e は「視覚→言語化→聴覚処理」で多ルート化(有効)
2. c の誤り易いポイント
「キーワード法」という言葉は聞き慣れているが「音韻が重篤でない場合」に限定。音韻障害が重篤なら、意味的・視覚的な形態学習法が優先される。
3. ディスレキシア指導の基本原則
音韻ルート障害→視覚ルート・意味ルートの活用
視覚障害併存→聴覚ルート(言語化)の活用