第21回 言語聴覚士国家試験 第139問
音響学第21回
東京方言の成人男性話者による発話「電車(でんしゃ)」に対し、時間波形と基本周波数曲線とを図に示す。誤っているのはどれか。【別図あり】
- 1.頭高型のアクセントで発話されている。 ✓
- 2.第1モーラよりも第3モーラの基本周波数が高い。
- 3.第2モーラの途中で曲線が上昇している。
- 4.基本周波数の最大値は200Hz以下である。
- 5.無声子音が途中にあたるため基本周波数曲線が切れている。
正答:1番
解説
■ 正答:1番 — 頭高型のアクセントで発話されている。
「電車」(でんしゃ)は東京方言において「低高型」アクセントです(LH型)。第1モーラ「で」が低く、第2モーラ「ん」から上昇して高いまま継続し、第3モーラ「し」で低下します。したがって「頭高型」(最初が高く途中で低下するHL型)という説明は誤りです。
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【各選択肢の解説】
1. 頭高型のアクセントで発話されている。
❌ 誤り。「電車」は東京方言では「低高型(LH型)」です。第1モーラが低く、第2モーラから高くなり、その後も高いままか緩やかに低下します。頭高型(HL型)ではありません。
2. 第1モーラよりも第3モーラの基本周波数が高い。
✅ 正しい。低高型アクセントでは、第1モーラ(「で」)の周波数が最も低く、第2・3モーラ(「んしゃ」)は高い周波数で維持されるため、第3モーラの周波数が第1モーラより高いのは必然的です。
3. 第2モーラの途中で曲線が上昇している。
✅ 正しい。低高型では第1モーラから第2モーラへ移行する際に基本周波数が上昇します。この上昇は通常第2モーラの途中に完了します。
4. 基本周波数の最大値は200Hz以下である。
✅ 正しい。成人男性話者の基本周波数は概ね120~180Hzの範囲が標準的で、通常200Hzを超えることは稀です。図から読み取る最大値もこの範囲内と考えられます。
5. 無声子音が途中にあたるため基本周波数曲線が切れている。
✅ 正しい。「電車」の中には「しゃ」の無声摩擦音「し」が含まれており、この無声子音区間では声帯が振動していないため基本周波数を測定できず、曲線が中断します。
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【試験対策ポイント】
【東京方言アクセント型と「電車」「寿司」「猫」の分類】
| 単語 | モーラ数 | アクセント型 | パターン | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| 電車 | 3 | 低高型(LH) | L-H-H | 1音目低、以後高維持 |
| 寿司 | 2 | 高高型(HH) | H-H | 両方高い(平坦) |
| 猫 | 2 | 頭高型(HL) | H-L | 1音目高、2音目低 |
| 箸 | 2 | 低高型(LH) | L-H | 1音目低、2音目高 |
【基本周波数曲線の重要知識】
- 成人男性:120~180Hz が標準範囲
- 成人女性:200~250Hz が標準範囲
- 有声音のみ周波数が測定される
- 無声子音「s, sh, ch, t, p, k」などで曲線が途切れる
- 鼻音「n, m」は有声→周波数曲線が継続
【アクセント型の視覚的判別】
頭高型(HL):グラフが山型→最初高い→途中で低下
低高型(LH):グラフが谷型→最初低い→途中で上昇→高維持
平板型:グラフが水平線→始終同じ高さ
【無声子音による曲線の中断箇所】
「電車」:し=[ʃ](無声歯茎後部摩擦音)→基本周波数曲線が白抜けまたは点線