STカコモン — 言語聴覚士国家試験 過去問・解説

第21回 言語聴覚士国家試験 第38問

音声学第21回
日本語(共通語)で音韻論的に対立する組合せはどれか。 a.[ta] ― [tha] b.[ka] ― [kja] c.[sa] ― [ҩa] d.[za] ― [dza] e.[ɡa] ― [ŋa] 1. a,b 2. a,e 3. b,c 4. c,d 5. d,e

正答:3番

解説
■ 正答:3番 — b.[ka] ― [kja]、c.[sa] ― [ҩa] 日本語において「音韻論的に対立する」とは、その音の違いが意味を区別する機能を持つことです。つまり、異なる音が現れることで、全く異なる言葉の意味を区別できるかどうかが判断基準になります。b と c は実際に日本語で異なる意味の言葉を区別する機能を持つため、音韻論的に対立しています。 --- 【各選択肢の解説】 a. [ta] ― [tha] ❌ 誤り。日本語の音韻体系に「[tha]」という音は存在しません。[ta] の「t」に気息(aspiration)がついた [tha] は、日本語では使用されないため、対立関係にありません。英語では [ta] と [tha] が対立(water と thaw など)しますが、日本語では該当しません。 b. [ka] ― [kja] ✅ 正しい。日本語で「か」[ka] と「きゃ」[kja] は異なる言葉を表します。例えば「蚊」[ka] と「きゃ(旧仮名遣い)」など、この音の違いが意味を区別するため、音韻論的に対立しています。日本語では k と kj は異なる音として機能します。 c. [sa] ― [ҩa] ✅ 正しい。[sa] は「さ」、[ҩa] は「しゃ」を表し、日本語で明らかに異なる意味を持つ言葉を区別します。例えば「砂」[sa] と「車」[ҩa]([ʃa])では、この音の違いが意味を決定的に変えるため、音韻論的に対立しています。 d. [za] ― [dza] ❌ 誤り。日本語の音韻体系では [za] と [dza] は音韻論的に対立していません。[z] と [dz] の違いは、日本語の標準的な音韻体系では機能的な対立をなしません。日本語話者にとっては同じ音の変種(アロフォン)とみなされます。 e. [ɡa] ― [ŋa] ❌ 誤り。日本語では [ŋa](撥音便の「んが」のような音)は単独の音韻として対立関係にありません。[ŋ] は鼻音「ん」ですが、「が」[ɡa] との対立は音韻論的機能を持たないため、対立関係にはなりません。 --- 【試験対策ポイント】 音韻論的対立 vs 音声学的違い | 観点 | 音韻論的対立 | 音声学的違い | |---|---|---| | 定義 | 意味を区別する機能を持つ音の違い | 単なる音の物理的・生理的な違い | | 例(日本語) | [ka] と [kja](意味が変わる) | [ta] と [tha](日本語で未使用) | | 判定法 | 異なる言葉が生じるか | 言語体系に両方が存在するか | 日本語の音韻体系で対立する音対 - か行:k, kj(「か」vs「きゃ」) - さ行:s, ʃ(「さ」vs「しゃ」)→[sa] vs [ҩa] - ため息音 vs 摩擦音は対立(さ行内で) - ん(鼻音)と他の音の対立は限定的 頻出の誤選肢パターン - aspiration の有無:英語では対立([ta] vs [tha])だが、日本語では非対立 - アロフォン関係:[z] と [dz] など、同じ音韻の変種同士は対立しない
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