第21回 言語聴覚士国家試験 第42問
聴覚心理学第21回
純音を雑音でマスクするときに関与する聴覚フィルタについて誤っているのはどれか。
- 1.蝸牛の基底板の周波数選択性が反映される。
- 2.関与する聴覚フィルタ以外を通過する雑音のパワーも影響する。 ✓
- 3.関与する聴覚フィルタの信号対雑音比が0dB以下でも純音は検出できる。
- 4.狭帯域雑音では中心周波数と純音周波数との関係でマスキング効果が変わる。
- 5.白色雑音のときの雑音パワーの上昇は検出閾値の上昇を起こす。
正答:2番
解説
■ 正答:2番 — 関与する聴覚フィルタ以外を通過する雑音のパワーも影響する
純音のマスキングに関与するのは「対象の純音周波数を通す聴覚フィルタ内の雑音パワー」に限定されます。フィルタ外の雑音は純音検出に直接関与しないため、選択肢2は誤りです。これは聴覚系が周波数選択的フィルタリング機能を持つことの本質を反映しています。
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【各選択肢の解説】
1. 蝸牛の基底板の周波数選択性が反映される。
✅ 正しい。蝸牛基底板の周波数選択性により、特定周波数帯域のみが機械的に共鳴します。この周波数選択性が聴覚フィルタ(臨界帯)の生理的基盤となり、マスキング曲線に反映されます。
2. 関与する聴覚フィルタ以外を通過する雑音のパワーも影響する。
❌ 誤り。聴覚フィルタモデルの核となる概念が「選択性」です。純音周波数に対応した聴覚フィルタ内に含まれる雑音パワーのみがマスキング効果に寄与し、フィルタ外の雑音は無視されます。フィルタ外の雑音パワーは影響しません。
3. 関与する聴覚フィルタの信号対雑音比が0dB以下でも純音は検出できる。
✅ 正しい。フィルタ内の雑音が信号より大きい場合でも、聴覚系の非線形性や時間的ダイナミクスにより検出は可能です。臨界比(critical ratio)の研究からも確認されています。
4. 狭帯域雑音では中心周波数と純音周波数との関係でマスキング効果が変わる。
✅ 正しい。狭帯域雑音の周波数位置が純音周波数から離れると、聴覚フィルタ内に含まれる雑音パワーが減少し、マスキング効果は減弱します。マスキング曲線の形状は雑音周波数に依存します。
5. 白色雑音のときの雑音パワーの上昇は検出閾値の上昇を起こす。
✅ 正しい。白色雑音のパワー増加は全周波数帯域で雑音が増加し、聴覚フィルタ内の雑音パワーも増加するため、純音検出閾値が上昇します。この関係は定量的に予測可能です。
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【試験対策ポイント】
聴覚フィルタ(臨界帯)の重要概念
| 概念 | 説明 |
|---|---|
| 聴覚フィルタ | 蝸牛基底板の周波数選択性に基づく帯域通過フィルタ |
| 臨界帯幅 | 低周波~3kHz:約100Hz、高周波:周波数の20~25% |
| マスキング選択性 | フィルタ外の雑音は「完全に無視」される |
マスキング曲線の重要知識
- マスキング曲線の形状は「雑音の周波数組成」で決定
- 信号対雑音比が悪くても、フィルタ内の雑音パワーが小さければ検出可能
- 狭帯域雑音は中心周波数に対してシャープなマスキング効果
- 白色雑音は全周波数で均等にマスキング
頻出誤解パターン
- 「全体の雑音パワー」でマスキングは決まらない ← フィルタ内のパワーのみ
- 「マスキング = 信号対雑音比で完全に決定」← 非線形性があるため異なる