第22回 言語聴覚士国家試験 第136問
音声学第22回
共通語(東京方言)で母音の無声化が生じるのはどれか。
a.かがみ(鏡)
b.きもち(気持ち)
c.くるま(車)
d.けしき(景色)
e.こころ(心)
1. a,b 2. a,e 3. b,c 4. c,d 5. d,e
正答:5番
解説
■ 正答:5番 — d,e(けしき・こころ)
共通語(東京方言)における母音の無声化は、無声子音(p, t, k, s, ts など)に挟まれた高母音(i, u)が、周囲の音響環境の影響で音声的に減弱または消失する現象です。けしきの[e]([ɛ])とこころの[o]([ɔ])は特定の音韻環境で無声化が生じます。
---
【各選択肢の解説】
a. かがみ(鏡)
❌ 誤り。[kagami]の場合、a音は低母音で無声化しません。無声化は高母音(i, u)で顕著に生じる現象です。
b. きもち(気持ち)
❌ 誤り。[kimoti]のi(高母音)は無声子音kに後続しますが、共通語での無声化基準では、先行子音がk、t、pで、かつ後続音が無声子音でない場合は無声化が生じにくいです。
c. くるま(車)
❌ 誤り。[kuruma]のu(高母音)は無声子音kに後続しますが、後ろにrという有声音が続くため、この音韻環境では無声化が起こりません。無声化は「無声子音+高母音+無声子音」の環境で生じやすいです。
d. けしき(景色)
✅ 正しい。[kɛɕiki]において、シ音([ɕ])の前のe音が無声化しやすい環境にあります。[ɕ]は無声子音で、eの後に無声子音が続く構造になるため、無声化が生じます。
e. こころ(心)
✅ 正しい。[kokoro]のo音が、無声子音k後に続き、その後ろにも無声子音k(次の音節の初頭)が控える環境で、無声化が生じやすくなります。
---
【試験対策ポイント】
母音無声化の発生環境:
| 条件 | 説明 |
|---|---|
| 対象音 | 高母音[i]と[u]が主体。[e]と[o]も周辺環境次第で無声化可能 |
| 先行条件 | 無声子音(k, t, p, s, ts, ʃなど)に直後される |
| 後続条件 | 無声子音が続くと無声化が促進される |
| 方言差 | 共通語では「k+[i/u]+無声子音」の環境が最典型例 |
重要な否定知識:
・低母音[a]は無声化しない
・有声子音直後の高母音は無声化しない
・孤立した高母音(後続音が有声)では無声化が弱い
・「きもち」のような「有声子音→高母音→有声子音」の並びでは無声化が抑制される