第22回 言語聴覚士国家試験 第171問
言語発達障害学第22回
4歳の知的障害の男児。主訴は「発話がはっきりしない」。始語3歳。最近急に語彙が増え、2語文の表出がみられるようになった。指導として適切なのはどれか。
a.自発話に対し拡張模倣によるフィードバックを行う。
b.構音訓練を中心に行う。
c.文の復唱課題を行う。
d.指導場面に繰り返しのあるやりとりを組み入れる。
e.物品を色・形・カテゴリーによって分類する課題を行う。
1. a,b,c 2. a,b,e 3. a,d,e 4. b,c,d 5. c,d,e
正答:3番
解説
■ 正答:3番 — a,d,e
この症例は知的障害を背景に持つ4歳児であり、発話の不明瞭さは単なる構音障害ではなく、言語発達の遅滞の一部です。最近言語が急速に発達し始めた段階であり、個別の音韻矯正よりも、言語基礎(理解・表出・相互作用)を促進する包括的アプローチが指導の中心になります。
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【各選択肢の解説】
a. 自発話に対し拡張模倣によるフィードバックを行う。
✅ 正しい。拡張模倣は、子どもが発した発話を大人が意味的に拡張して返す手法(例:子「ママ」→大人「ママがいるね」)で、言語発達の初期段階で特に有効です。知的障害児の言語発達促進に適切です。
b. 構音訓練を中心に行う。
❌ 誤り。発話が不明瞭なのは構音障害が主体ではなく、言語発達遅滞の一症状です。知的障害児の場合、言語理解・表出・相互作用といった言語基礎の発達段階に対応した指導が優先されます。構音訓練を「中心に」行うのは時期尚早です。
c. 文の復唱課題を行う。
❌ 誤り。この児童は始語が3歳と遅く、最近やっと2語文が出始めた段階です。すでに複数語を正確に操る能力を求める復唱課題は、発達段階に合致していません。理解と表出の基盤が不十分な段階での復唱は教育効果が低いです。
d. 指導場面に繰り返しのあるやりとりを組み入れる。
✅ 正しい。知的障害児の言語発達には「反復」が不可欠です。大人と子どもの間に繰り返しのあるやりとり(ターン・テイキング)を組み込むことで、相互作用スキル、語彙の定着、表出意欲が促進されます。特に初期段階に有効です。
e. 物品を色・形・カテゴリーによって分類する課題を行う。
✅ 正しい。分類課題は、語彙の意味的関係性を理解させ、カテゴリー化能力を促進します。知的障害児の場合、単なる言語習得以前に「概念形成」を支援することが重要であり、分類活動はそれに直結します。
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【試験対策ポイント】
知的障害児への言語指導の優先順位(発達段階に応じた選択)
| 段階 | 特徴 | 優先的指導 | 避けるべき指導 |
|---|---|---|---|
| 言語初期(語彙50語未満) | 語彙爆発前、1語文段階 | 拡張模倣、親子相互作用、ターン・テイキング | 復唱課題、複文理解、音韻矯正中心 |
| 発展期(1~2語文) | 最近語が増え始めた段階 | カテゴリー分類、概念形成、繰り返しのやりとり | 複文レベルの課題 |
| 定着期(複数語以上) | 理解・表出基盤が安定 | 構音訓練、文法習得 | (それ以前の課題の比重を下げる) |
本症例の発達段階:始語3歳→4歳で2語文出現=発展期前半
知的障害児における構音訓練の位置づけ
- 「発話が不明瞭」=常に構音障害とは限らない
- 知的障害児では、語彙の不足・概念理解の未熟さが音韻習得に先行
- 言語基礎(理解・表出能力)が一定程度に達する