第22回 言語聴覚士国家試験 第180問
機能性構音障害第22回
7歳男児。サ行音がタ行音に置換している。他の構音に問題はない。子音[ s ]を産生させる上で正しいのはどれか。
- 1.頬をふくらませる
- 2.開口し舌尖を挙上させる
- 3.口唇を閉鎖し声をださせる。
- 4.舌尖を左右口角につけさせる。
- 5.舌と前歯の狭めから呼気を出させる。 ✓
正答:5番
解説
■ 正答:5番 — 舌と前歯の狭めから呼気を出させる
子音[s]は無声歯茎摩擦音で、舌尖を上下前歯の間に置き、舌と前歯間の狭い隙間から呼気を摩擦させることで産生されます。本症例のサ行音がタ行音への置換(いわゆる「タ行化」)は舌位置が高くなり過ぎている可能性があり、正しい舌尖位置と呼気方向の指導が改善の鍵となります。
---
【各選択肢の解説】
1. 頬をふくらませる
❌ 誤り。[s]音の産生には頬の膨張は不要です。むしろ口唇・口腔内の形態制御が重要であり、頬の筋緊張は音響特性に悪影響を及ぼす可能性があります。
2. 開口し舌尖を挙上させる
❌ 誤り。舌尖を過度に挙上させると[t]音(無声歯茎破裂音)に近い産生法になります。本症例の「タ行化」はまさに舌尖が上げ過ぎていることが原因の可能性が高く、この指導は誤った方向です。
3. 口唇を閉鎖し声をださせる
❌ 誤り。[s]は無声音(声帯振動なし)であり、声を出してはいけません。また口唇閉鎖は[p]や[b]などの両唇音の特徴であり、[s]産生とは無関係です。
4. 舌尖を左右口角につけさせる
❌ 誤り。舌尖が口角に位置すると舌位置が後退し過ぎます。[s]音は歯茎音であり、舌尖は上下前歯の間(前歯部)に置く必要があります。
5. 舌と前歯の狭めから呼気を出させる
✅ 正しい。[s]音の正確な産生要件です。舌尖を上下前歯間に置いて狭い隙間を形成し、その間隙を通して呼気を摩擦させることで、高周波成分を含む摩擦音が得られます。
---
【試験対策ポイント】
無声歯茎摩擦音[s]の産生機序(重要):
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 音韻分類 | 無声・摩擦音・歯茎音 |
| 舌位置 | 舌尖を上下前歯間に置く |
| 舌幅 | 狭くする(隙間形成) |
| 呼気 | 狭めを通して摩擦を起こす |
| 声帯 | 振動なし(無声) |
| 音響特性 | 高周波成分が顕著 |
サ行→タ行置換の原因:
- 舌尖が歯茎後部まで上昇(過度な挙上)
- 結果:舌が前歯に接触せず、破裂音[t]に近い産生
- 改善方法:舌尖を「下げる」「前歯の間に置く」という指導が中心
紛らわしい選択肢の区別:
- 選択肢2「舌尖を挙上」=×(症状の原因と同じ)
- 選択肢4「口角に置く」=×(舌が後退し過ぎる)
- 選択肢5「前歯の狭め」=○([s]の本質的産生法)