第23回 言語聴覚士国家試験 第39問
音声学第23回
ラ行音とダ行音とに発音の混同が生じやすい。この要因として考えられるのはどれか。
a.構音位置が近い。
b.ダ行音でVOT(voiceonsettime)が負の値になる。
c.ラ行音がそり舌で発音される。
d.どちらも帯気を伴わない。
e.どちらも舌が口蓋に接触する。
1. a,b 2. a,e 3. b,c 4. c,d 5. d,e
正答:2番
解説
■ 正答:2番 — a,e
ラ行音とダ行音の混同が生じやすい要因は、構音位置の近さと、両音とも舌が口蓋に接触するという音韻的特性にあります。この二つの共通性により、聴者の知覚に混乱が生じ、特に幼児期の音韻獲得過程では代替音として用いられやすくなります。
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【各選択肢の解説】
a. 構音位置が近い。
✅ 正しい。ラ行音(歯茎硬口蓋音)とダ行音(歯茎音)は、構音位置が歯茎周辺で非常に近接しており、音響的に類似しています。この近接性が聴覚的な混同を招く主要因です。
b. ダ行音でVOT(voice onset time)が負の値になる。
❌ 誤り。ダ行音は有声音であるため、VOTは「負の値」ではなく「0~+50ms程度(短い正の値)」です。無声音は正のVOTを持ちます。負のVOTは音声開始が声門開口より先行する現象で、ダ行には該当しません。
c. ラ行音がそり舌で発音される。
❌ 誤り。日本語のラ行音は「反り舌(そり舌)」ではなく、「歯茎硬口蓋音」(叩き音)として発音されます。反り舌音は国語音韻体系に含まれません。この誤解はラ行とダ行の混同要因ではありません。
d. どちらも帯気を伴わない。
❌ 誤り。帯気(アスピレーション)は無声音に関連する特性です。ダ行音は有声音であり、帯気を伴いません。ラ行も帯気を伴いませんが、「どちらも帯気を伴わない」という共通性は、混同の直接的な要因ではありません。
e. どちらも舌が口蓋に接触する。
✅ 正しい。ラ行音は舌が歯茎硬口蓋部に接触して発音され、ダ行音も舌が上歯茎部に接触します。両音とも「舌の口蓋接触」という調音特性を共有することが、音響的・知覚的な類似性を生み出し、混同を助長します。
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【試験対策ポイント】
| 項目 | ラ行音 | ダ行音 |
|---|---|---|
| 構音位置 | 歯茎硬口蓋 | 歯茎 |
| 構音方法 | 叩き音(フラップ) | 破裂音 |
| 舌接触 | あり(硬口蓋) | あり(上歯茎) |
| 有無声 | 有声 | 有声 |
| VOT | 0~+20ms | 0~+50ms |
| 帯気 | なし | なし |
【重要区別】
- そり舌音:反り舌の先端が硬口蓋に接触。日本語標準音には存在しない
- 歯茎硬口蓋音:舌全体が硬口蓋寄りで接触。日本語ラ行はこれ
- VOT負の値:音声が声門開口より先行する場合(該当なし)
【臨床における注意】
構語音障害児が「ラ」を「ダ」で代替する場合、構音位置の近接性と舌接触部位の共通性を根拠に、位置付け矯正あるいはシェイピング法が有効とされています。