第23回 言語聴覚士国家試験 第85問
嚥下障害第23回
嚥下反射惹起不全による嚥下障害への対応で正しいのはどれか。
a.頭部前屈
b.頸部回旋
c.ブローイング法
d.咽頭冷圧刺激法
e.食物形態の調整
1. a,b,c 2. a,b,e 3. a,d,e 4. b,c,d 5. c,d,e
正答:3番
解説
# 第23回 第85問 解説
■ 正答:3番 — a, d, e
嚥下反射惹起不全とは、食塊が咽頭に達しても嚥下反射が起こりにくい・遅れる状態です。対応としては、①咽頭への流入を遅らせて反射が起きるまで時間を稼ぐ姿勢調整(**頭部前屈**)、②咽頭感覚を高めて反射を誘発する手技(**咽頭冷圧刺激法**)、③食塊形態を反射が起こりやすい性状に整える(**食物形態の調整**)が有効です。
---
【各選択肢の解説】
a. 頭部前屈
✅ 正しい。頭部前屈(chin down/うなずき嚥下)により喉頭蓋谷が広がり、食塊が咽頭に貯留してから嚥下反射が起こるまでの時間を稼げます。誤嚥防止に加え、反射惹起遅延への代償姿勢として有効です。
b. 頸部回旋
❌ 誤り。頸部回旋は咽頭麻痺側を閉鎖し、健側を通過させる手技で、**片側咽頭麻痺による咽頭残留**への対応です。反射惹起不全そのものの改善法ではありません。
c. ブローイング法
❌ 誤り。ブローイング法は軟口蓋挙上訓練であり、**鼻咽腔閉鎖不全**に対する間接訓練です。嚥下反射の惹起促進が目的ではありません。
d. 咽頭冷圧刺激法(アイスマッサージ/TTS)
✅ 正しい。冷却した綿棒などで前口蓋弓や舌根部を刺激することで、咽頭の感覚入力を高め、嚥下反射の惹起を促進します。反射惹起不全に対する代表的な間接訓練です。
e. 食物形態の調整
✅ 正しい。液体は咽頭通過が速く反射が間に合わず誤嚥しやすいため、**とろみ付け・ゼリー状・ペースト状**にすることで通過速度を遅らせ、反射惹起の時間的余裕を確保できます。
---
【試験対策ポイント】
**嚥下反射惹起不全への対応**は「反射が起こるまで時間を稼ぐ」「感覚刺激で反射を誘発する」の2方向で整理します。
| 対応 | 目的 | 反射惹起不全への有効性 |
|---|---|---|
| 頭部前屈 | 咽頭流入遅延・誤嚥防止 | ○ |
| 咽頭冷圧刺激法 | 感覚入力で反射誘発 | ○ |
| 食物形態調整(とろみ等) | 通過速度低下 | ○ |
| 頸部回旋 | 麻痺側閉鎖(咽頭残留対策) | ✕ |
| ブローイング法 | 鼻咽腔閉鎖不全訓練 | ✕ |
**手技と適応の対応を取り違えないこと**が重要です。
- **頸部回旋 → 片側咽頭残留**
- **ブローイング → 鼻咽腔閉鎖不全**
- **冷圧刺激・頭部前屈・形態調整 → 反射惹起不全**
「ブローイング=呼気訓練で咽頭刺激」と誤解しやすいですが、本来は**軟口蓋挙上**を狙った訓練である点に注意しましょう。