STカコモン — 言語聴覚士国家試験 過去問・解説

第24回 言語聴覚士国家試験 第38問

音声学第24回
基本母音の説明として正しいのはどれか。
  1. 1.円唇母音・非円唇母音の対のうち非円唇の方である。
  2. 2.言語音を記述するための基準となる母音である。 ✓
  3. 3.多くの言語で使われている標準的な母音である。
  4. 4.日本語の5母音の標準的発音である。
  5. 5.幼児が最初に獲得する母音である。

正答:2番

解説
■ 正答:2番 — 言語音を記述するための基準となる母音である。 基本母音(cardinal vowels)は、IPA(国際音声記号協会)により体系的に定義された参照基準です。舌位置や唇形の基準点として機能し、世界中の言語の母音を記述・分類するための絶対的な尺度となります。これは音声学における実証的・客観的な音の分析に必須の概念です。 --- 【各選択肢の解説】 1. 円唇母音・非円唇母音の対のうち非円唇の方である ❌ 誤り。基本母音には円唇・非円唇の両方が含まれます。例えば[i](非円唇)と[y](円唇)は対をなしますが、両方とも基本母音に含まれています。唇形の別によって選別されるのではなく、舌位置(前後・高低)が基準になります。 2. 言語音を記述するための基準となる母音である ✅ 正しい。基本母音の定義そのものです。IPA作成時にDaniel Jonesにより8個の基本母音(後に追加されて12個)が定義され、世界の全母音を相対的に記述・比較するための参照点として機能します。 3. 多くの言語で使われている標準的な母音である ❌ 誤り。基本母音は実際の言語使用と無関係に理論的に構成された参照体系です。言語的な一般性や使用頻度ではなく、音声学的な記述便宜性に基づいています。 4. 日本語の5母音の標準的発音である ❌ 誤り。日本語の5母音[a, i, u, e, o]は基本母音と一部重複しますが、同一ではありません。日本語は独自の音韻体系を持っており、基本母音はあくまで国際的な分析ツールです。 5. 幼児が最初に獲得する母音である ❌ 誤り。言語獲得順序は言語によって異なり、基本母音体系とは無関係です。むしろ乳児は周囲言語の音韻体系に適応する過程で、特定の母音を獲得します。 --- 【試験対策ポイント】 基本母音(Cardinal Vowels)の本質 | 項目 | 内容 | |---|---| | 定義 | 言語音記述のための参照基準母音 | | 作成者 | Daniel Jones(IPA創設時) | | 個数 | 原型8個→現在12個(IPA更新で拡張) | | 基準軸 | 舌の前後位置・高さ、唇の丸め | | 機能 | 世界言語の母音を客観的に分類・比較 | | 言語的意義 | 実際の言語体系とは独立した理論的構築物 | 紛らわしい選択肢の区別 - 「多くの言語で使われている」(選択肢3)と「基準となる」(選択肢2)は表面上似ていますが、基本母音は実際の言語現象ではなく分析の枠組みです。 - 「日本語の5母音」(選択肢4)は実在する音韻体系であり、基本母音という理論体系とは層が異なります。 ST国試での頻出文脈 基本母音は「音韻体系」「音声記述」「言語の多様性理解」の文脈で出題されます。失語症や構音障害の評価で「どの母音が障害されているか」を分析する際の基準となるため、音声学の基礎として重要です。
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