第24回 言語聴覚士国家試験 第42問
聴覚心理学第24回
ピッチの生成について誤っているのはどれか。
- 1.周期的複合音のピッチは基本周波数によって決定される。
- 2.蝸牛の基底板上の共振点の位置がピッチを決めるとするのが場所説である。
- 3.音の波形の特定位相に固定した聴神経発火の時間間隔がピッチを決めるとするのが時間説である。
- 4.3kHz以下のピッチは時間説で説明できる。
- 5.明確な周期性を持たないバンドノイズのピッチは時間説で説明できる。 ✓
正答:5番
解説
■ 正答:5番 — 明確な周期性を持たないバンドノイズのピッチは時間説で説明できる。
バンドノイズは周期性を持たないため、聴神経の発火パターンに時間的な周期構造が生じません。したがって時間説の原理(位相ロック)では説明不可能です。ピッチ知覚には周期的な信号が必須条件であり、周期性がない音には明確なピッチが知覚されない、またはピッチが知覚されづらくなります。
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【各選択肢の解説】
1. 周期的複合音のピッチは基本周波数によって決定される。
✅ 正しい。複雑な音声やバイオリン音でも、基本周波数(F0)の欠落しているハーモニック複合音でも、聴者は基本周波数のピッチを知覚します。これはシェファード効果や失われた基本周波数現象として知られています。
2. 蝸牛の基底板上の共振点の位置がピッチを決めるとするのが場所説である。
✅ 正しい。場所説(プレイス説)の基本原理です。異なる周波数は基底板の異なる位置で最大変位を示し、その位置情報が周波数コード化されます。
3. 音の波形の特定位相に固定した聴神経発火の時間間隔がピッチを決めるとするのが時間説である。
✅ 正しい。時間説の核心は「位相ロック現象」です。聴神経単一線維の発火タイミングが音波の特定位相に同期するため、発火間隔がピッチ周期と対応し、中枢でその時間パターンをデコードしてピッチを知覚します。
4. 3kHz以下のピッチは時間説で説明できる。
✅ 正しい。低周波数帯域(3kHz以下)では位相ロックが明瞭に成立し、時間説が適用できます。むしろ低周波音のピッチ知覚は時間説に強く依存しており、時間説が最適な説明原理です。
5. 明確な周期性を持たないバンドノイズのピッチは時間説で説明できる。
❌ 誤り。バンドノイズ(例:ホワイトノイズをフィルタリングしたもの)は周期性を持たないため、聴神経の発火パターンに時間的な周期構造が形成されません。時間説は周期的な信号パターンの検出を前提とするため、周期性のない刺激には適用不可能です。バンドノイズでピッチが知覚される場合、それは場所説的な機構(蝸牛フィルタリングの包絡周波数など)で説明されます。
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【試験対策ポイント】
ピッチ知覚の2大理論(場所説 vs 時間説)
| 項目 | 場所説(プレイス説) | 時間説(テンポラル説) |
|---|---|---|
| 機構 | 蝸牛基底板の共振位置 | 聴神経発火の時間パターン |
| 位相ロック | 不要 | 必須(位相同期) |
| 適用周波数帯 | 高周波(3kHz以上) | 低周波(3kHz以下) |
| 基底板分解能 | 高周波でよい | 低周波で制限 |
| 用語 | 周波数コード化 | 時間コード化 |
重要概念の整理
・周期性が必須:時間説は周期的な刺激に限定される
・バンドノイズの性質:スペクトラム幅は狭いが時間的周期性はない
・複合音での基本周波数:基音が存在しなくても知覚(場所説のみでは説明困難)
・臨界帯域幅(3kHz