STカコモン — 言語聴覚士国家試験 過去問・解説

第25回 言語聴覚士国家試験 第142問

言語学第25回
英語のgoの過去形がwentになるように、屈折・派生に際して語根の異なる形式を用いる現象を補充法という。尊敬法を作るのに補充法を用いていないのはどれか。 a.来られる b.ご覧になる c.召し上がる d.おいでになる e.お食べになる 1. a,b 2. a,e 3. b,c 4. c,d 5. d,e

正答:2番

解説
■ 正答:2番 — a,e 補充法は「go-went」のように、語根そのものが異なる形式を用いて屈折・派生を行う現象です。尊敬法を作る際に補充法を用いていない選択肢(補充法を使わずに通常の接辞で尊敬法を作っているもの)はa「来られる」とe「お食べになる」です。a,eはいずれも「-られる」「お~になる」という接辞のみで尊敬法を形成し、語根そのものを変えていません。 --- 【各選択肢の解説】 a. 来られる ✅ 補充法を使っていない。「来る」→「来られる」は語根「き」「こ」を維持したまま接辞「-られる」を付加しただけで、語根が異なる形式を用いていません。 b. ご覧になる ❌ 補充法を使っている。「見る」の尊敬法が「ご覧になる」であり、「み」から「らん」への語根の交替が起こっています(古い日本語の敬語システムに基づく補充関係)。 c. 召し上がる ❌ 補充法を使っている。「食べる」の尊敬法が「召し上がる」であり、「たべ」から「めし」への語根の交替が起こっています。語根そのものが異なる形式を用いた典型的な補充法です。 d. おいでになる ❌ 補充法を使っている。「いる」の尊敬法が「おいでになる」であり、「い」から「おいで」への語根の交替が起こっています。 e. お食べになる ✅ 補充法を使っていない。「食べる」→「お食べになる」は語根「たべ」を維持したまま接辞「お~になる」を付加しただけで、語根が異なる形式を用いていません。 --- 【試験対策ポイント】 補充法(suppletion)の判定法: - 語根そのものの交替があるか確認する - 単なる接辞の付加(-られる、お~になる)だけなら補充法ではない - 古典的敬語語彙(見→ご覧、食べ→召し上がる、いる→おいで)は補充法を用いている場合が多い 日本語の敬語における補充法の例: | 原形 | 尊敬法 | 補充法の有無 | 理由 | |---|---|---|---| | 見る | ご覧になる | あり | 「み」→「らん」の語根交替 | | 食べる | 召し上がる | あり | 「たべ」→「めし」の語根交替 | | いる | おいでになる | あり | 「い」→「おいで」の語根交替 | | 来る | 来られる | なし | 語根「き」「こ」を維持、接辞のみ | | 食べる | お食べになる | なし | 語根「たべ」を維持、接辞のみ | | 飲む | お飲みになる | なし | 語根「のみ」を維持、接辞のみ | ポイント:古典的な敬語ほど補充法が用いられている傾向。近代的な敬語表現(お~になる、-られる)では接辞のみで形成されることが多い。
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