第27回 言語聴覚士国家試験 第144問
言語学第27回
「あがる」という動詞には、前世紀末には「上へ移動する」「緊張する」などの意味があったが、近年若年層で「テンションがあがる」という意味が付け加わっている。
この変化の記述として適切でないのはどれか。
- 1.時間が経つにつれ、語の意味が変化するという例である。
- 2.言語共同体全体に広まるまでは、地域方言とみなされる。 ✓
- 3.この意味変化を知らない高齢者には、理解されない可能性がある。
- 4.「この前バンドでステージに立ってあがった」は複数の解釈があり得る。
- 5.「あがる」という動詞は既にあるが、意味が拡張しているので社会方言と言える。
正答:2番
解説
■ 正答:2番 — 言語共同体全体に広まるまでは、地域方言とみなされる。
「あがる」の新しい意味用法は、若年層という特定の「世代」に限定された用法であり、これは「社会方言」(特に年代による言語差)に分類されるもので、「地域方言」ではありません。地域方言は地理的な地域差によるもので、年代による差異とは異なります。また、言語共同体全体への広がりの段階を「方言か標準か」の判断基準にすることも不適切です。
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【各選択肢の解説】
1. 時間が経つにつれ、語の意味が変化するという例である。
✅ 正しい。「上へ移動する」「緊張する」という元の意味から「テンションがあがる」という新しい意味が付け加わった現象は、意味変化(意味拡張)の典型的な例です。言語は時間とともに変化する特性を示しています。
2. 言語共同体全体に広まるまでは、地域方言とみなされる。
❌ 誤り。この用法は若年層に限定されているため、地理的な「地域方言」ではなく、年代による「社会方言」(年代方言・世代方言)です。地域方言は「東北方言」「関西方言」など地理的区分によるもので、年代差によるものではありません。また「言語共同体全体に広まるまで方言」という説明も不正確です。
3. この意味変化を知らない高齢者には、理解されない可能性がある。
✅ 正しい。新しい意味用法が若年層に限定されているため、高齢者がこの表現を聞いても理解できない、あるいは意図した意味を読み取れない可能性は十分あります。世代による言語知識の差を示す実例です。
4. 「この前バンドでステージに立ってあがった」は複数の解釈があり得る。
✅ 正しい。この文は「緊張する(舞台緊張)」という従来の意味にも「テンションがあがる(興奮する)」という新しい意味にも解釈できるため、複数の解釈が成立します。意味の多義性を示す良い例です。
5. 「あがる」という動詞は既にあるが、意味が拡張しているので社会方言と言える。
✅ 正しい。既存の動詞に新たな意味が付け加わり、それが特定の年代(若年層)に限定されている現象は「社会方言」として分類されます。特に年代による言語差を示す典型的なケースです。
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【試験対策ポイント】
方言の分類
| 分類 | 定義 | 例 |
|---|---|---|
| 地域方言 | 地理的な地域による言語差 | 東北方言、関西方言、琉球方言 |
| 社会方言 | 社会的属性による言語差 | 年代方言(若年層vs高齢層)、性差方言、階級方言 |
意味変化の種類
| 類型 | 説明 | 本問での該当 |
|---|---|---|
| 意味拡張 | 既存の意味に新しい意味が付け加わる | 「上へ移動」+「テンション上昇」 |
| 意味変化 | 語の意味そのものが時間とともに変わる | — |
| 多義性 | 複数の意味が同時に存在する状態 | 「あがった」の解釈の揺れ |
重要な否定知識
- 「言語共同体全体に広まるまでは方言である」という説は誤り。既に広がっていない限定的な用法も方言(特に社会方言)と呼ぶ
- 社会方言 ≠ 地域方言。年代・性別・階級による差は社会方言
- 新しい用