第27回 言語聴覚士国家試験 第172問
言語発達障害学第27回
小学校2年生の女児。併存障害のない発達性読み書き障害と診断されている。指導として適切でないのはどれか。
- 1.書くときにはマス目に収まるよう指導する。 ✓
- 2.キーワード法を用いてひらがな指導を行う。
- 3.板書の内容を事前にプリントで配布する。
- 4.タブレット端末を使う場面を増やす。
- 5.漢字は文脈の中で提示する。
正答:1番
解説
■ 正答:1番 — 書くときにはマス目に収まるよう指導する。
発達性読み書き障害の子どもに対して、マス目に「収まるよう」指導することは、むしろ認知負荷を増やし学習阻害につながります。読み書き障害児は既に文字認識や運動協調に困難があるため、「正確な字形」よりも「読み書きの意味と機能」の習得を優先すべきです。視覚的・運動的な制限を厳しくすることは、学習意欲低下や二次的な心理的困難を招きます。
---
【各選択肢の解説】
1. 書くときにはマス目に収まるよう指導する。
❌ 誤り。読み書き障害児への指導原則に反します。マス目への「厳密な収納指導」は、既に過負荷状態にある認知資源をさらに圧迫し、文字学習の本質(音韻と文字の対応、意味理解)から注意を逸らします。運筆指導は必要ですが、達成困難な「完全性」を求めることは避けるべきです。
2. キーワード法を用いてひらがな指導を行う。
✅ 正しい。キーワード法は音韻と視覚的イメージを結びつける認知的ストラテジーで、読み書き障害児の学習に有効です。例えば「ま=窓」のように、文字形と意味を関連付けることで、単なる形態学習ではなく意味的符号化を促進します。
3. 板書の内容を事前にプリントで配布する。
✅ 正しい。読み書き障害児は書き写し(転記)に極めて時間がかかり、その間に重要な講義内容を見失います。事前配布により、板書作業の認知負荷を軽減し、内容理解に集中できます。合理的配慮の標準的手法です。
4. タブレット端末を使う場面を増やす。
✅ 正しい。キーボード入力やタッチペン操作は、手書きが困難な読み書き障害児にとって代替手段となります。音声入力機能の活用も検討でき、学習へのアクセスを多元化できます。
5. 漢字は文脈の中で提示する。
✅ 正しい。孤立した文字学習よりも、意味のある文章や物語の中で漢字を導入することで、文字の機能と意味が統合され、習得が促進されます。読み書き障害児は特に文脈的支援を必要とします。
---
【試験対策ポイント】
発達性読み書き障害(DD)の指導原則
| 適切な支援 | 不適切な取り組み |
|---|---|
| 音韻認識と文字の対応を工夫的に教える | 字形の完全性を厳密に求める |
| 読み書きの機能・意味を重視する | 運筆練習の反復 |
| 代替手段(PC・タブレット等)の導入 | 手書きのみに固執 |
| 事前プリント・聴覚情報の活用 | 転記の要求 |
| 文脈的・意味的学習 | 孤立した字形学習 |
重要否定知識
・「矯正的訓練(←誤概念)」ではなく「代替・工夫・支援」が基本
・認知負荷の「軽減」と「階段化」がキー
・自尊感情の維持は学習継続に不可欠