STカコモン — 言語聴覚士国家試験 過去問・解説

第28回 言語聴覚士国家試験 第181問

運動障害性構音障害第28回
70歳の男性。1か月前に脳梗塞を発症した。一音ずつ発すると歪みを認めないが、発話を速くすると全ての子音に歪みを認める。適切な訓練はどれか。
  1. 1.鼻咽腔閉鎖機能改善訓練
  2. 2.口腔顔面分離運動訓練 ✓
  3. 3.声門閉鎖強化訓練
  4. 4.呼気力改善訓練
  5. 5.姿勢保持訓練

正答:2番

解説
# 第28回 第181問 解説 ■ 正答:**2番** — 口腔顔面分離運動訓練 脳梗塞による一側性の中枢神経障害で、**発話速度が上がると構音が悪化する**点が診断の鍵です。一音ずつはっきり発音できるが速くなると歪むという所見は、**痙性構音障害**と**運動低下性構音障害**の混在が疑われます。この場合、口腔・顔面周囲の筋肉を正確に・選別的に動かす**精密性の向上**が最優先となるため、**口腔顔面分離運動訓練**(対称的・分離的な動きの学習)が適切です。 --- ## 【各選択肢の解説】 **1. 鼻咽腔閉鎖機能改善訓練** ❌ 誤り。この患者に開鼻声や鼻漏気の報告がないため、鼻咽腔閉鎖不全が問題ではありません。口蓋裂や器質的VPI(velopharyeal insufficiency)が主対象であり、脳梗塞後の中枢性痙性構音障害には不適切です。 **2. 口腔顔面分離運動訓練** ✅ **正しい。** 脳梗塞による上位運動ニューロン障害では、個別の筋グループを独立して正確に制御できなくなります。口唇突出・口輪筋の選別的収縮・舌の左右分離運動などを繰り返し行うことで、**神経回路の可塑性を促し、精密な口腔運動の回復**を図ります。速度が上がると破綻するのは、この精密性欠如が原因です。 **3. 声門閉鎖強化訓練** ❌ 誤り。患者の嗄声の報告がなく、声帯の内転力不足は示唆されていません。声門破裂音や気息性嗄声があれば対象となりますが、ここでは「子音全体の歪み」が主訴であり、個別の声門閉鎖の強化は優先度が低いです。 **4. 呼気力改善訓練** ❌ 誤り。呼気量・呼気力の不足があれば、発話音量低下や無気音の弱化がみられます。しかし問題文では「歪み」が中心であり、音量や息の強さの問題ではなく、**調音精密性の障害**が本質です。 **5. 姿勢保持訓練** ❌ 誤り。体幹・頸部の姿勢改善は嚥下安定や呼吸効率に寄与しますが、一音ずつ発音できるのに速度で破綻する現象に対しては直接的な解決にはなりません。中枢神経系の回復には姿勢も一要素ですが、**構音の精密性**を直接改善するものではありません。 --- ## 【試験対策ポイント】 ### ■ 痙性構音障害の臨床的特徴と訓練戦略 | 特徴 | 臨床所見 | 対応訓練 | |---|---|---| | 上位運動ニューロン障害(両側) | 努力性嗄声・発話速度低下・音声不安定・音韻置換 | **口腔顔面分離運動訓練**:精密性重視 | | 運動精密性の低下 | 一音ずつはゆっくり・正確だが速度↑で破綻 | リズム訓練・速度制御・段階的な速度上昇 | | 筋緊張亢進(痙直) | 腱反射亢進・反跳現象 | 筋弛緩訓練・ROM運動(受動的から能動的へ) | ### ■ **「速度依存的構音障害」の重要性**
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