第15回 言語聴覚士国家試験 第138問
音響学第15回
音声生成のソース(音源)・フィルタモデルにおける声道フィルタの役割として適切なのはどれか。
a.特定の倍音を強める。
b.特定の倍音を弱める。
c.特定の倍音を加える。
d.特定の倍音を除く。
e.特定の倍音の周波数を変える。
1. a,b 2. a,e 3. b,c 4. c,d 5. d,e
正答:1番
解説
■ 正答:1番 — a,b(特定の倍音を強める、特定の倍音を弱める)
ソース・フィルタモデルにおいて、声道フィルタ(vocal tract filter)は声帯振動の基本周波数と倍音を含む複雑な音(ソース)に対して、周波数特性の選別を行います。声道内の共鳴によって特定の周波数帯域は強調され(フォルマント周波数)、その他の周波数は減衰されます。これは既存の倍音を増幅または減衰させるプロセスであり、新たに倍音を加えたり、周波数を変えたり、倍音を除去するものではありません。
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【各選択肢の解説】
a. 特定の倍音を強める。
✅ 正しい。声道共鳴により特定の周波数帯域(フォルマント周波数)は強調されます。これが母音の音響的特徴を決定する主要因です。
b. 特定の倍音を弱める。
✅ 正しい。声道フィルタの周波数特性によって、フォルマント周波数の谷部分に相当する倍音は減衰・抑制されます。
c. 特定の倍音を加える。
❌ 誤り。フィルタは既存の周波数成分に対して作用するのであり、新たな倍音を生成することはありません。倍音の追加は原音源(声帯振動)の役割です。
d. 特定の倍音を除く。
❌ 誤り。倍音を完全に除去するのではなく、減衰させることはあっても「除く」わけではありません。低レベルでも存在します。
e. 特定の倍音の周波数を変える。
❌ 誤り。フィルタは倍音の周波数位置を変えません。強調または減衰させるのみで、周波数軸上の移動は生じません。
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【試験対策ポイント】
ソース・フィルタモデルの基本構造:
| 構成要素 | 役割 | 実体 |
|---|---|---|
| ソース | 基本周波数と倍音を含む複雑音の生成 | 声帯振動 |
| フィルタ | ソースの周波数特性の選別(強弱) | 声道共鳴 |
声道フィルタの機能(3点セット):
- フォルマント周波数:強調される周波数帯域
- 倍音の強弱:既存倍音の増幅または減衰が役割
- 新規生成や周波数変化は「されない」
紛らわしい選択肢の区別:
- 「加える」vs「強める」→加えるは0から有にする、強めるは既存を大きくする
- 「除く」vs「弱める」→除くは完全削除、弱めるは減衰のみ
- 「周波数を変える」は倍音の位置移動を意味するが、フィルタはピッチ変更をしない