STカコモン — 言語聴覚士国家試験 過去問・解説

第15回 言語聴覚士国家試験 第190問

小児聴覚障害第15回
250Hzで30dB、500Hzで40dB、1000Hz以上が90dBの聴力レベルの先天性両側難聴児の発話について正しいのはどれか。 a.[m]の歪みがおこる。 b.[i]の歪みがおこる。 c.[s]が脱落する。 d.抑揚が平坦である。 e.リズム感が不良である。 1. a,b 2. a,e 3. b,c 4. c,d 5. d,e

正答:3番

解説
■ 正答:3番 — b,c この難聴パターンは高周波数帯(1000Hz以上)で著しい聴力低下を示す「高音急墜型」です。低周波数での聴取が比較的保持されるため、低周波音への依存が強まり、特に高周波帯を必要とする音が脱落・歪みを起こします。[i]は2000〜3000Hzに第2フォルマントを持つため歪みやすく、[s]は高周波エネルギーが必須のため脱落しやすくなります。 --- 【各選択肢の解説】 a.[m]の歪みがおこる。 ❌ 誤り。[m]は両唇鼻音で、250Hz付近に基本周波数を持ち、この周波数帯は30dBで比較的良好に聴取できます。低周波音が保持されているため、[m]は正常に産出されやすいです。 b.[i]の歪みがおこる。 ✅ 正しい。[i]は舌前方を挙上させた高舌位母音で、第2フォルマント(F2)が2000〜3000Hzの高周波帯に位置します。1000Hz以上が90dBで極めて聴取困難なため、音響的フィードバックが大きく障害され、音質が歪みます。 c.[s]が脱落する。 ✅ 正しい。[s]は歯茎摩擦音で、3000〜8000Hzの極めて高い周波数帯にエネルギーが集中しています。この帯域が90dBでは実質的に聴取不可能なため、[s]は産出されずに脱落する傾向が強いです。 d.抑揚が平坦である。 ❌ 誤り。抑揚(イントネーション)は基本周波数(F0)の時間的変化で実現されます。基本周波数は100〜200Hz程度であり、この周波数帯は低周波で比較的聴取できるため、抑揚は保持されやすいです。抑揚の平坦化は低周波帯の高度難聴で見られます。 e.リズム感が不良である。 ❌ 誤り。リズム感は周期的な時間間隔知覚であり、特定周波数への依存度が低い認知機能です。また、リズム知覚には低周波帯の音情報が重要であり、この症例では低周波が保持されているため、リズム感は比較的良好です。 --- 【試験対策ポイント】 フォルマント周波数と聴力型による発話障害の関係: | 音韻 | 重要周波数帯 | 聴力パターンによる影響 | |---|---|---| | [m][n][ŋ] | 低周波(F1:300Hz以下) | 低周波難聴で脱落。高音急墜では保持 | | [a][o] | 低〜中周波(F1〜F2:1000Hz以下) | 高音急墜でも比較的保持 | | [i][u] | 高周波(F2:2000〜4000Hz) | 高音急墜で歪み・脱落 | | [s][ʃ] | 超高周波(3000〜8000Hz) | 高音急墜で著しく脱落しやすい | 高音急墜型難聴児の発話特性: - 低周波音の依存度が増加→低周波成分で音を補償しようとする - [s]の脱落は極めて特徴的(高周波必須音) - [i]など高舌位母音の音質劣化 - 抑揚・リズムは基本周波数に依存するため比較的保持される - アクセント・プロソディーの異常は低周波帯の高度難聴で見られる キーワード:フォルマント周波数の把握が命。250Hz≒低周波(聴取可)、1000Hz以上
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