第15回 言語聴覚士国家試験 第192問
小児聴覚障害第15回
前言語期の難聴児のコミュニケーション指導について適切でないのはどれか。
- 1.子どもの発声に呼応する。
- 2.子どもとの相互的な関係を成立させる。
- 3.母親から子どもを分離して指導を行う。 ✓
- 4.情動レベルのコミュニケーションを重視する。
- 5.身振りや表情を豊かにする。
正答:3番
解説
■ 正答:3番 — 母親から子どもを分離して指導を行う。
前言語期の難聴児のコミュニケーション指導は、親子の相互作用(マザリーズ)を基盤とした家族中心アプローチが原則です。母親との愛着関係を損なう「分離指導」は、感情的安心感を失わせ、学習動機づけや言語発達を著しく阻害するため、決して行いません。適切な指導は母親をパートナーとして位置づけ、親子相互作用の質を高めることに焦点を当てます。
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【各選択肢の解説】
1. 子どもの発声に呼応する。
✅ 正しい。子どもの発声や音声模倣に対して大人が即座に反応することで、相互的なターンテイキングが成立し、コミュニケーション欲求が醸成される重要な指導手法です。
2. 子どもとの相互的な関係を成立させる。
✅ 正しい。前言語期はコミュニケーション基盤の形成時期であり、相互的なやりとりを通じて意図的コミュニケーションの芽が育つとされています。これが後の言語習得へと繋がります。
3. 母親から子どもを分離して指導を行う。
❌ 誤り。前言語期難聴児の指導は家族中心アプローチが標準であり、母親との愛着関係こそが学習の基盤です。分離は避けるべき対象です。むしろ親子相互作用の質的向上に支援の主眼を置きます。
4. 情動レベルのコミュニケーションを重視する。
✅ 正しい。言語発達以前の情動的応答性(笑い・泣き・喜怒哀楽の表現)を豊かに育むことで、コミュニケーション意欲が高まり、その後の語言習得への動機づけが強化されます。
5. 身振りや表情を豊かにする。
✅ 正しい。難聴児に対する身振り・表情は「視覚的なマザリーズ」として機能し、音声言語の不足を補う重要な手段です。特に前言語期では視覚情報の活用が極めて有効です。
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【試験対策ポイント】
前言語期難聴児の指導原則と紛らわしい否定形知識:
| 指導方針 | 適切か | 理由 |
|---|---|---|
| 母親をパートナーとする | ✅ | 親子相互作用が言語発達基盤 |
| 母親から分離 | ❌ | 愛着関係損失→動機づけ低下 |
| 相互的ターンテイキング | ✅ | 意図的コミュニケーション芽生え |
| 情動的応答性の育成 | ✅ | 言語習得前の重要基盤 |
| 視覚的コミュニケーション充実 | ✅ | 音声補完・表情・身振り活用 |
キーフレーズ:「家族中心アプローチ」「親子相互作用」「情動基盤」「視覚情報活用」
紛らわしい知識との区別:学童期以降の構音訓練や音韻習得指導とは異なり、前言語期は「関係性形成」と「コミュニケーション欲求の醸成」が最優先です。親子分離は、むしろ児童発達支援における「母子分離不安」と同じく、発達的害悪をもたらします。