第15回 言語聴覚士国家試験 第21問
聴覚系第15回
正しいのはどれか。
- 1.音の大きさの感覚は音の周波数と関係しない。
- 2.中耳伝音系によって音エネルギーが付加される。
- 3.音の左右時間差に関与する最下位の中枢は上オリーブ核である。 ✓
- 4.内耳性難聴の特徴として一過性閾値上昇がある。
- 5.内耳有毛細胞の働きが基底板の鋭い周波数特性をもたらしている。
正答:3番
解説
■ 正答:3番 — 音の左右時間差に関与する最下位の中枢は上オリーブ核である。
両耳の時間差(ITD:Interaural Time Difference)は音源定位において重要な手がかりであり、上オリーブ核が両耳からの信号を受け取り、その時間差を神経的に検出する最初の中枢です。Jeffress仮説で知られるように、上オリーブ核の神経回路が時間差コーディングに直接関与しています。
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【各選択肢の解説】
1. 音の大きさの感覚は音の周波数と関係しない。
❌ 誤り。音の大きさの感覚は周波数と強く関連しており、これを等ラウドネス曲線(フレッチャー・マンソン曲線)で表現します。同じ音圧レベルでも、周波数によって主観的な音量が異なります(特に低周波では実際より小さく聞こえます)。
2. 中耳伝音系によって音エネルギーが付加される。
❌ 誤り。中耳は外耳からの音エネルギーを増幅しますが、「付加」はしません。インピーダンス整合により、外耳から内耳への音の伝達効率を約30dB向上させていますが、これは既存エネルギーの効率的伝達であって、新たなエネルギー付加ではありません。
3. 音の左右時間差に関与する最下位の中枢は上オリーブ核である。
✅ 正しい。上オリーブ核(Nucleus Olivaris Superior)は両耳からの信号を受け取る最初の中枢核であり、両耳時間差(ITD)検出の生理学的基盤です。Jeffress仮説のディレイライン回路を実現する構造として、神経生物学で確立されています。
4. 内耳性難聴の特徴として一過性閾値上昇がある。
❌ 誤り。一過性閾値上昇(TTS:Temporary Threshold Shift)は騒音曝露後に一時的に起こる聴力低下であり、内耳性難聴(感音難聴の一種)ではなく、むしろ正常聴覚の可塑性を示す現象です。内耳性難聴は不可逆的で永続的です。内耳性難聴の特徴は高音周波数域の障害(高音障害型)やめまいなどです。
5. 内耳有毛細胞の働きが基底板の鋭い周波数特性をもたらしている。
❌ 誤り。基底板の周波数特性(周波数選別性)は、基底板そのものの物理的性質(基部で硬く狭く、頂部で柔らかく広い構造)に由来します。有毛細胞の活動は音受容と神経伝達を担いますが、基底板の周波数選別性をもたらしているのではありません。むしろ最近の研究では、外有毛細胞の能動的な機械応答が周波数解析を鋭くするのに寄与していますが、それでも基本的な周波数マップは基底板の機械特性から決まります。
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【試験対策ポイント】
音の大きさ感覚と周波数の関係
| 項目 | 特徴 |
|---|---|
| 等ラウドネス曲線 | 同じラウドネスを感じる周波数別の音圧が異なる |
| 低周波(100Hz以下) | 高周波と同じ大きさに聞こえるには高い音圧が必要 |
| 4kHz付近 | 最も感度が高い周波数帯(聴力計の参照周波数) |
| 臨床意義 | 聴力障害の知覚的影響は周波数ごとに異なる |
両耳時間差(ITD)処理の階層構造
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