STカコモン — 言語聴覚士国家試験 過去問・解説

第15回 言語聴覚士国家試験 第51問

言語聴覚障害総論第15回
誤っているのはどれか。
  1. 1.手話は言語的コミュニケーションである。
  2. 2.言語は無限に新しい表現を作り出すことができる。
  3. 3.言語において能記と所記との間には必然性がある。 ✓
  4. 4.言語の使用的側面を研究する分野を語用論という。
  5. 5.広汎性発達障害では語用論的な問題を持つことが多い。

正答:3番

解説
■ 正答:3番 — 言語において能記と所記との間には必然性がある。 言語の基本的特性として、能記(音韻形式)と所記(概念・意味)の関係は任意性(恣意性)があります。つまり「犬」という音韻形式と「犬という動物」という意味の間に自然的・必然的な結びつきはなく、言語社会の約束によって成立しています。「必然性がある」という記述は言語学の基本原理に矛盾しています。 --- 【各選択肢の解説】 1. 手話は言語的コミュニケーションである。 ✅ 正しい。手話は音韻言語と同等の言語体系を持ち、文法・語彙・統語構造を備えた言語的コミュニケーション手段です。聴覚障害者の母語として認識されています。 2. 言語は無限に新しい表現を作り出すことができる。 ✅ 正しい。言語の創造性(生成性):有限の要素(音韻・語彙)から無限に新しい文を生成できるという言語の本質的特性です。チョムスキーの普遍文法論の核となっています。 3. 言語において能記と所記との間には必然性がある。 ❌ 誤り。言語学における基本原則は能記と所記の間の「任意性(恣意性)」です。例えば「雪」と「snow」と「neige」は同じ対象を指しますが、音韻形式と意味の関連性は言語社会の慣約によってのみ成立しており、物理的・自然的な必然性はありません。 4. 言語の使用的側面を研究する分野を語用論という。 ✅ 正しい。語用論は言語が実際のコンテクストでどのように使用されるか、文脈や話者の意図がどう働くかを研究します。失語症やASD(広汎性発達障害)の語用論的問題把握に臨床的に重要です。 5. 広汎性発達障害では語用論的な問題を持つことが多い。 ✅ 正しい。自閉症スペクトラム障害(ASD)に含まれる広汎性発達障害は、共同注視の欠如・会話の相互性の障害・文脈理解の困難など、典型的な語用論的障害を示します。これはASDの診断基準の一部です。 --- 【試験対策ポイント】 **言語学の基本特性(必ず押さえる5つ)** | 特性 | 定義 | 対比概念 | |---|---|---| | 任意性 | 能記と所記の間に必然性がない | 必然性:動物の鳴き声など | | 恣意性 | 言語社会の約束によってのみ成立 | 自然的必然性 | | 創造性 | 有限要素から無限表現を生成 | 固定的使用 | | 二重分節性 | 音韻と意味の2段階構造 | 一次的コミュニケーション | | 直線性 | 音声は時間的に直線的に表現 | 空間的表現(手話の一部) | **言語学の主要研究分野** - 音韻論:音の体系 - 形態論:語の構造 - 統語論:文の構造 - 意味論:言語の意味 - 語用論:言語の使用(文脈・意図)← ASD・失語症で障害 **広汎性発達障害における語用論的問題** - 会話のターン・テイキングの困難 - 相手の心理状態(心の理論)の理解不全 - 文脈理解・推論の不得手 - 非字義的表現(冗談・暗喩)の理解困難
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