第15回 言語聴覚士国家試験 第57問
失語症第15回
失語症の書字能力について正しいのはどれか。
- 1.非利き手でも評価できる。 ✓
- 2.書き取りができれば書称はできる。
- 3.漢字が書ければ平仮名は書ける。
- 4.アラビア数字が書ければ漢数字は書ける。
- 5.自分の氏名と住所が書ければ失書はない。
正答:1番
解説
■ 正答:1番 — 非利き手でも評価できる。
失語症の書字能力評価では、麻痺の有無と失書の区別が重要です。利き手が麻痺している場合でも、非利き手で書字させることで失書の有無を判定できます。麻痺と言語障害は独立した問題であり、非利き手の書字パフォーマンスから中枢言語処理の障害を評価することは臨床的に有用です。
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【各選択肢の解説】
1. 非利き手でも評価できる。
✅ 正しい。失語症患者が利き手麻痺を呈する場合、非利き手での書字能力を評価することで、運動機能の障害ではなく真の失書(言語処理障害)を同定できます。臨床実践では非常に重要な評価法です。
2. 書き取りができれば書称はできる。
❌ 誤り。失語症では「音韻ルート」と「意味ルート」が独立して障害される可能性があります。書き取り(音から字への変換)ができても、意味理解を要する書称(物を見て字を書く)ができないことは珍しくありません。
3. 漢字が書ければ平仮名は書ける。
❌ 誤り。失語症患者では、同じ音韻でも表記体系による障害パターンが異なります。特に意味処理が障害されている場合、意味的根拠のある漢字は保持されやすく、音韻のみの平仮名は障害されやすい傾向があります。逆のパターンも存在します。
4. アラビア数字が書ければ漢数字は書ける。
❌ 誤り。選択肢3と同様のメカニズムで、アラビア数字(形態)と漢数字(音韻+意味)は異なる言語処理システムを使用します。一方が保持されても他方が障害されることは十分あり得ます。
5. 自分の氏名と住所が書ければ失書はない。
❌ 誤り。氏名・住所は頻用語彙で自動化されており、これらが保持されていても、非頻用語彙や命名書字が著しく障害されている場合は失書が存在します。部分的な失書を見落とす危険があります。
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【試験対策ポイント】
失語症の書字障害評価における重要な概念:
| 評価項目 | 評価方法 | 注意点 |
|---|---|---|
| 運動機能との鑑別 | 非利き手での書字 | 麻痺がなければ失書を診断可能 |
| 音韻ルート障害 | 書き取り不可、音読不可 | 意味理解は比較的保持 |
| 意味ルート障害 | 書称・写字障害 | 音韻処理は比較的保持 |
| 両ルート障害 | 全般的な書字障害 | 失語症全般で見られる |
独立した処理システムの概念:
- 音韻ルート:音→音韻→字形(書き取り・音読)
- 意味ルート:視覚→意味→字形(写字・書称)
- 異なる表記体系(漢字vs平仮名、アラビア数字vs漢数字)も独立して障害される
- 自動化語彙(氏名・住所など)と非自動化語彙は別の処理系
紛らわしい選択肢の区別:
- 「〜ができれば〜できる」という論理(選択肢2・3・4)は失語症では成立しない
- 「〜がなければ失書はない」(選択肢5)も部分的失書を見落とすため誤り
- 唯一評価法として有効なのは「評価手段の工夫」(選択肢1)