第15回 言語聴覚士国家試験 第86問
嚥下障害第15回
気管切開を受けた患者について一般的に正しいのはどれか。
- 1.喉頭閉鎖時に声門下圧を陽圧に維持できない。 ✓
- 2.嚥下時の喉頭挙上が容易になる。
- 3.嚥下障害患者には側孔のあるカニューレは避ける。
- 4.嚥下障害患者にはカニューレへの一方弁装着は避ける。
- 5.直接的嚥下訓練はカニューレのカフ圧を上げてから行う。
正答:1番
解説
# 第15回 第86問 解説
■ 正答:1番 — 喉頭閉鎖時に声門下圧を陽圧に維持できない。
気管切開を受けると、気管が喉頭より下方で外界に開放されるため、嚥下時に声門を閉鎖しても声門下圧を陽圧に保つことができません。声門下圧は咳嗽力や嚥下時の圧形成に関与するため、その喪失は誤嚥防止機構の低下につながります。
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【各選択肢の解説】
1. 喉頭閉鎖時に声門下圧を陽圧に維持できない。
✅ 正しい。気管切開孔から空気が漏れるため、声門閉鎖後も声門下に陽圧を形成できず、嚥下時の圧形成や咳嗽力が低下します。
2. 嚥下時の喉頭挙上が容易になる。
❌ 誤り。気管切開によりカニューレが気管壁に固定されるため、喉頭の可動性は制限され、喉頭挙上はむしろ困難になります。これにより食道入口部の開大も不十分となり、嚥下障害が生じやすくなります。
3. 嚥下障害患者には側孔のあるカニューレは避ける。
❌ 誤り。側孔(スピーチタイプ)のあるカニューレは呼気を上気道へ流すことで発声を可能にし、声帯の感覚刺激や声門閉鎖機能の維持にも寄与するため、嚥下障害患者にも有用とされます。一律に避けるべきものではありません。
4. 嚥下障害患者にはカニューレへの一方弁装着は避ける。
❌ 誤り。一方弁(スピーキングバルブ)は呼気を上気道に通すことで、声門下圧の回復・発声・嗅覚刺激・嚥下機能の改善に寄与するため、嚥下障害患者でも積極的に活用されます。
5. 直接的嚥下訓練はカニューレのカフ圧を上げてから行う。
❌ 誤り。カフ圧を上げると喉頭・気管が圧迫され、喉頭挙上が制限されて嚥下機能はかえって低下します。直接訓練ではカフ圧を適正に管理(または減圧・抜去)して行うのが原則です。
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【試験対策ポイント】
気管切開が嚥下に及ぼす影響を整理:
| 項目 | 影響 |
|---|---|
| **声門下圧** | 陽圧維持できない→咳嗽力・嚥下圧低下 |
| **喉頭挙上** | カニューレ固定により制限される |
| **側孔付きカニューレ** | 発声可能・上気道感覚刺激→嚥下に有用 |
| **一方弁(スピーキングバルブ)** | 声門下圧回復・発声・嚥下改善に有用 |
| **カフ圧** | 過剰圧は喉頭挙上を妨げる |
覚え方:気管切開の最大の弊害は「**声門下圧を陽圧にできない**」こと。これにより咳嗽・嚥下が障害される。一方弁や側孔は嚥下にむしろプラスに働く点に注意。