第15回 言語聴覚士国家試験 第91問
小児聴覚障害第15回
4歳児で髄膜炎によって重度難聴発症。
言語指導で優先するのはどれか。
- 1.構音
- 2.構文
- 3.談話構成
- 4.語彙獲得
- 5.コミュニケーション ✓
正答:5番
解説
■ 正答:5番 — コミュニケーション
髄膜炎後の重度難聴児は言語基盤そのものが欠如している状態です。構音や語彙などの個別言語スキルを指導する前に、まず本児と指導者間の「意思疎通」を確立することが最優先です。コミュニケーション手段(手話・筆談・ジェスチャー等)を整備することで、その後の言語学習の土台が作られます。
---
【各選択肢の解説】
1. 構音
❌ 誤り。4歳で突発的に重度難聴になった場合、聴覚フィードバックが遮断され、既に獲得していた構音も崩壊する傾向があります。構音指導は、コミュニケーション基盤の確立後に位置づけられます。
2. 構文
❌ 誤り。文法構造の学習は、その前提として十分な語彙と基本的なコミュニケーション成立が必要です。重度難聴児の言語基盤が整っていない段階では、構文指導は実質的な効果をもちません。
3. 談話構成
❌ 誤り。談話構成(話題の展開・物語構成など)は、より高度な言語スキルです。最初の段階では、目の前の相手との単純な情報交換すら成立していないため、優先度は最も低いです。
4. 語彙獲得
❌ 誤り。語彙は確かに重要ですが、「何を学ぶか」の前に「どうやって学ぶか」という学習方法・手段が確立されていません。コミュニケーション手段なくして、効率的な語彙学習は困難です。
5. コミュニケーション
✅ 正しい。指導者と本児の間に基本的なコミュニケーション経路がなければ、その後のあらゆる言語指導は成立しません。手話・補聴器・人工内耳・視覚的補助など、本児に適した手段を確保することが最優先課題です。
---
【試験対策ポイント】
言語指導の優先順位(ピラミッド構造)
| 段階 | 内容 | 指導時期 |
|---|---|---|
| 1段階(基盤) | コミュニケーション手段の確立 | 最優先 |
| 2段階 | 語彙基盤・単語の理解と表現 | その次 |
| 3段階 | 構文・文法体系 | さらに後 |
| 4段階 | 構音精緻化 | 中期以降 |
| 5段階(応用) | 談話・物語・複文 | 最後期 |
重度難聴児の指導における重要否定知識
- 補聴器装用「だけ」でコミュニケーションが自動的に成立するわけではない
- 既習の構音技能は、聴覚フィードバック喪失で「リセット」される
- 先天性難聴児と異なり、後天的重度難聴児は「喪失」の心理的インパクトが大きい
- コミュニケーション手段が曖昧なままの「語彙カード」練習は実効性が低い
関連概念:髄膜炎後難聴の特徴
- 時期:乳幼児・学童期に多い
- 程度:しばしば高度〜重度
- 聴力型:高音急墜型が多い
- 追加障害:前庭障害(平衡感覚喪失)も併発することが多く、全身運動発達にも影響