第16回 言語聴覚士国家試験 第108問
精神医学第16回
40歳の男性、商社の営業課長。几帳面な性格。休日も出社して仕事をしていたが、 2 週間前から不眠、全身倦怠感、食欲減退がみられ 、 「自分には 能力がない」と突然上司に辞表を提出しようとした。翌日、妻に伴われて精神科受診。今とられるべき対応はどれか 。
- 1.病気であることを告知して休職を勧める。 ✓
- 2.性格上の問題点を本人とともに検討して自覚を促す。
- 3.仕事上の問題点を本人とともに検討して課題の処理を促す。
- 4.会社と家庭から離れて温泉地などにひとりで転地療養させる.
- 5.周囲の期待と敬意を伝え課長として仕事を続けるよう励ます。
正答:1番
解説
■ 正答:1番 — 病気であることを告知して休職を勧める。
本症例は典型的なうつ病の急性期です。2週間の短期間に不眠・全身倦怠感・食欲減退という身体症状と、抑制的・否定的思考(「自分には能力がない」)が出現し、衝動的に辞表提出を試みています。急性期うつ病患者は判断能力が低下しており、病識がなく、自殺念慮を伴うリスクが高い状態です。このような状況では、まず医学的な「治療対象である病気」として認識させ、仕事から一時的に離脱させることが最優先です。
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【各選択肢の解説】
1. 病気であることを告知して休職を勧める。
✅ 正しい。急性期うつ病では抑制的思考が強く、自殺企図のリスクが高まっています。本人の判断能力が低下している時期に、無理に仕事を継続させると症状が悪化し、重篤な転帰につながります。診断告知と休職により、治療に専念させる環境を整備することが生命予後と回復に直結します。
2. 性格上の問題点を本人とともに検討して自覚を促す。
❌ 誤り。急性期の抑制的思考状態では、このような認知的アプローチは効果がなく、むしろ自責念慮を強化する危険があります。心理教育や認知療法は回復期以降に行うべき介入です。
3. 仕事上の問題点を本人とともに検討して課題の処理を促す。
❌ 誤り。現在、本人は仕事処理能力が低下している状態です。問題解決を促すことは、さらなる負荷となり、症状悪化と自殺企図につながります。「仕事を続けよ」という圧力は禁物です。
4. 会社と家庭から離れて温泉地などにひとりで転地療養させる。
❌ 誤り。急性期うつ病患者を隔離・孤立させることは自殺リスクを高めます。また、家族サポートが遮断される点でも不適切です。転地療養は症状が安定した回復期の選択肢です。
5. 周囲の期待と敬意を伝え課長として仕事を続けるよう励ます。
❌ 誤り。励ましは無効であり危険です。うつ病の急性期には「頑張れ」という励ましは自責念慮を増強させ、自殺企図の契機となります。本人の能力低下を無視した期待の押しつけは禁物です。
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【試験対策ポイント】
うつ病の急性期対応(重要)
| 対応 | 時期 | 内容 | ○/× |
|---|---|---|---|
| 診断告知と休職 | 急性期(1〜4週) | 治療専念・自殺予防 | ✅ |
| 励ましや期待の伝達 | 急性期 | 自責念慮増強・危険 | ❌ |
| 問題解決の促進 | 急性期 | さらなる負荷・悪化 | ❌ |
| 心理教育・認知療法 | 回復期以降 | 再発予防・洞察増進 | ✅ |
キーワード
- 判断能力低下:休職は治療の一部(本人同意重視も可、ただし急性期は説得的告知が優先)
- 自殺念慮スクリーニング:衝動的辞表=高リスク信号
- 「頑張れ」は禁句:うつ病には無効&危険
- 家族の関与:孤立化防止が重要(単独転地は不適切)
紛らわしい選択肢の区別
選択肢1と選択肢5の区別