第16回 言語聴覚士国家試験 第152問
言語聴覚障害総論第16回
誤っているのはどれか。
a.硬起声発声は喉頭筋の緊張低下に対する訓練である。
b.漸次接近法は構音訓練に用いられる。
c.ペーシングボードは発話速度を上昇させるために用いられる。
d.機能再編成法は障害された言語様式の機能を活性化させる。
e.マンド・モデル法はコミュニケーション行動の訓練に用いられる。
1. a,b 2. a,e 3. b,c 4. c,d 5. d,e
正答:4番
解説
■ 正答:4番 — c,d
**ペーシングボード**は発話速度を「低下」させるための代償手段であり、発話速度を上昇させるものではありません。また**機能再編成法**は損傷脳領域の周辺領域や対側半球を活動させることで代償を促すもので、「障害された言語様式の機能を活性化」するのではなく、代替機構を活用する方法です。
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【各選択肢の解説】
a. 硬起声発声は喉頭筋の緊張低下に対する訓練である。
✅ 正しい。硬起声発声(hard glottal attack)は、発声時に声帯を意図的に強く閉じることで喉頭筋の緊張を高める訓練です。弛緩性構音障害や声帯麻痺による音声障害の改善に用いられます。
b. 漸次接近法は構音訓練に用いられる。
✅ 正しい。漸次接近法(gradual approach)は目標音に近い音から始めて、段階的に目標音に近づけていく構音訓練方法です。構音障害患者の音韻習得に広く用いられます。
c. ペーシングボードは発話速度を上昇させるために用いられる。
❌ 誤り。ペーシングボードは指で順番にマスを触れて進めることで、発話速度を**低下**させるための代償手段です。失調性構音障害や加速現象が見られるパーキンソン病など、過度に速い発話を抑制する必要がある場合に用いられます。
d. 機能再編成法は障害された言語様式の機能を活性化させる。
❌ 誤り。機能再編成法(functional reorganization)は、損傷脳領域の周辺領域や対側半球を活動させることで、失った機能を代替する神経可塑性を利用した方法です。「障害された機能そのものを活性化」するのではなく、新たな神経経路で代償機構を形成します。
e. マンド・モデル法はコミュニケーション行動の訓練に用いられる。
✅ 正しい。マンド・モデル法(mand-model procedure)は応用行動分析(ABA)に基づき、対象者の要求(マンド)を引き出し、モデル提示後に模倣を促すことでコミュニケーション行動を拡大させる訓練法です。自閉症スペクトラム障害や知的障害児の言語発達に有効です。
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【試験対策ポイント】
構音・音声訓練法 vs 神経学的リハビリテーション法
| 方法名 | 対象障害 | 作用機序 | 誤りやすい点 |
|---|---|---|---|
| 硬起声発 | 弛緩性構音障害 | 喉頭筋緊張↑ | 筋緊張を高める(低下に対する訓練) |
| 漸次接近法 | 構音障害全般 | 段階的習得 | 段階的に目標音に接近 |
| **ペーシングボード** | 失調性・加速現象 | 発話速度↓ | **速度を上昇させるではなく低下** |
| **機能再編成法** | 失語症・脳卒中 | 神経可塑性活用 | **代替機構形成であり、元の機能活性化ではない** |
| マンド・モデル法 | 発達障害・知的障害 | ABA原理 | 要求引き出し→モデル→模倣の流れ |
頻出「誤らせ選択肢」パターン:
- ペーシングボード:速度「低下」(上昇と逆)
- 機能再編成:「代償」「神経可塑性」がキーワード(機能活性化ではない)