第16回 言語聴覚士国家試験 第41問
音響学第16回
「なく(泣く)」の発話でホルマントが現れない音声区間はどれか。
- 1.「な」の鼻音区間
- 2.「な」の母音区間
- 3.「く」の閉鎖区間 ✓
- 4.「く」の破裂区間
- 5.「く」の母音区間
正答:3番
解説
■ 正答:3番 — 「く」の閉鎖区間
ホルマントが現れるためには、音声源(声帯振動)と共鳴腔(声道)が相互作用して初めて形成されます。「く」の閉鎖区間は、口腔内が完全に閉鎖されているため声道が実質的に存在せず、ホルマント周波数が形成されません。これに対し、他の全ての選択肢は何らかの声道形状が保持されており、ホルマント構造が観察されます。
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【各選択肢の解説】
1. 「な」の鼻音区間
✅ 正しい。鼻音[n]は口腔が閉鎖されていますが、鼻腔が開放されており、この鼻腔共鳴によって周波数成分(鼻音フォルマント)が形成されます。音響特性としてホルマント帯域幅が広いのが特徴です。
2. 「な」の母音区間
✅ 正しい。[a]は本来単独では「あ」ですが、鼻音[n]に続く環境で鼻化母音化する傾向があります。このとき口腔は開放されており、明確なホルマント構造が現れます。
3. 「く」の閉鎖区間
❌ 誤り(正答)。閉鎖音の閉鎖相では、両唇あるいは口蓋と舌が接触し、口腔内が気密に閉鎖されます。この状態では声道が実質的に存在しないため、周波数特性(ホルマント)を形成する共鳴腔システムが機能せず、ホルマントが現れません。音響学的には「無音」あるいは「閉鎖音の無声区間」として捉えられます。
4. 「く」の破裂区間
✅ 正しい。破裂区間(バースト音)では、閉鎖が解放される瞬間に狭い気流が通過し、ホワイトノイズ的な周波数特性が形成されます。これは周期的なホルマント構造ではありませんが、周波数成分は観察されます。
5. 「く」の母音区間
✅ 正しい。「く」の後続母音[u]は、口腔が開放された状態で発話され、舌の位置による共鳴腔形状が存在するため、典型的なホルマント構造(特にF1・F2)が観察されます。
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【試験対策ポイント】
ホルマント出現の必要条件
| 条件 | ホルマント出現 | 出現しない |
|---|---|---|
| 声帯振動 | あり | なし |
| 声道開放 | あり(鼻腔含む) | 完全閉鎖 |
| 周波数構造 | F1・F2・F3… | 無し |
音節内各音響区間の特性
| 音響区間 | 音声源 | 共鳴腔 | ホルマント |
|---|---|---|---|
| 鼻音[n] | 声帯振動○ | 鼻腔開放 | ◎出現(帯域幅広) |
| 母音 | 声帯振動○ | 口腔開放 | ◎出現(明確) |
| 閉鎖相 | なし/弱い | 完全閉鎖 | ✗なし |
| 破裂相 | あり | 急速解放 | △周波数成分 |
重要キーワード
- 閉鎉区間:「気密閉鎖」「声道消失」→ホルマント不可
- 破裂区間:「バースト」「ノイズ的」→周波数成分あるが周期構造なし
- 鼻音:「鼻腔共鳴」「帯域幅広い」→ホルマント出現する
試験での引っかかりポイント
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