第16回 言語聴覚士国家試験 第56問
失語症第16回
発語失行にあって痙性構音障害にないのはどれか。
- 1.口唇音の舌音への置換 ✓
- 2.音の歪み
- 3.鼻音への置換
- 4.一貫した音の誤り
- 5.音の省略
正答:1番
解説
# 第16回 第56問 解説
■ 正答:1番 — 口唇音の舌音への置換
発語失行は音韻の運動プログラミング障害であり、ある音が別の音に入れ替わる「置換」が特徴的に現れます。一方、痙性構音障害は錐体路(両側上位運動ニューロン)障害による筋の痙性麻痺が原因であり、音の「歪み」が主症状で、音そのものが別の音に入れ替わる「置換」は原則として起こりません。
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【各選択肢の解説】
1. 口唇音の舌音への置換
✅ 正しい。発語失行では「パ」→「タ」のような調音点の異なる音への置換が頻発します。これは音韻の運動プログラミング(どの調音器官をどう動かすかの指令)が障害されるためです。痙性構音障害では麻痺により運動範囲は制限されますが、目標とする音とは別の音への「置換」は基本的に起こりません。よって**発語失行にあって痙性構音障害にない**特徴です。
2. 音の歪み
❌ 誤り。音の歪みは発語失行でも痙性構音障害でも共通して認められます。特に痙性構音障害では歪みが主症状となります。
3. 鼻音への置換
❌ 誤り。発語失行では「バ」→「マ」のような鼻音への置換が起こります。痙性構音障害でも軟口蓋の痙性麻痺により鼻咽腔閉鎖機能が低下し鼻音化(開鼻声)が生じるため、両者に共通して認められます。
4. 一貫した音の誤り
❌ 誤り。痙性構音障害は麻痺に基づくため、同じ音で常に同じ誤り方をします(一貫性あり)。一方、発語失行は同じ語でも毎回異なる誤り方をします(一貫性なし・試行錯誤的)。したがって「一貫した音の誤り」は**痙性構音障害にあって発語失行にない**特徴であり、問いとは逆の関係になります。
5. 音の省略
❌ 誤り。音の省略は発語失行でも痙性構音障害でも起こり得るため、鑑別点にはなりません。
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【試験対策ポイント】
**発語失行 vs 痙性構音障害**の鑑別は頻出テーマです。3軸で整理すると覚えやすいです。
| 特徴 | 発語失行 | 痙性構音障害 |
|---|---|---|
| 障害レベル | 音韻の**運動プログラミング** | 錐体路障害による**痙性麻痺** |
| 主な誤り | **置換・省略・添加** | **歪み** |
| 誤りの一貫性 | なし(毎回異なる・試行錯誤的) | あり(常に同じ誤り) |
| 音の置換 | **あり**(特徴的) | なし |
| 音の歪み | あり | あり(主症状) |
| 自覚・修正努力 | あり(音を探す様子) | 少ない |
| 随伴症状 | ブローカ失語に合併多い | 仮性球麻痺・情動失禁 |
覚え方:**「発語失行=置換・非一貫」「痙性構音障害=歪み・一貫」**。本問のように「どちらにあってどちらにないか」を問う形式では、選択肢4(一貫性)のように**逆の組み合わせ**を混ぜてくるのが定番なので、置換=発語失行・一貫=構音障害をセットで覚えておくこと。