第16回 言語聴覚士国家試験 第57問
失語症第16回
自発話流暢、聴覚的理解良好。復唱困難な失語症でみられるのはどれか。
- 1.発語失行
- 2.接近行為 ✓
- 3.反響言語
- 4.再帰性発話
- 5.ジャルゴン
正答:2番
解説
■ 正答:2番 — 接近行為
自発話が流暢で聴覚的理解が良好だが復唱が著しく困難という特徴は、伝導失語の典型的な臨床像です。伝導失語患者は、聞き取った言葉を復唱しようとする際に、聴覚的理解と運動性言語表出の不一致から「接近行為」(目標とする言葉に徐々に近づく試行錯誤的な修正過程)を示します。
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【各選択肢の解説】
1. 発語失行
❌ 誤り。発語失行は「プログラミングレベルの障害」であり、主にBroca失語や伝導失語初期に現れることはありますが、特異的な症状ではありません。また、聴覚的理解が良好で自発話が流暢という場合、発語失行よりも言語学的な言語症状(復唱障害)が前景化します。
2. 接近行為
✅ 正しい。接近行為(approximation)は、正しい応答に向かって段階的に修正していく試行錯誤的行動で、伝導失語に極めて特徴的です。患者は「聞いた言葉が理解できる」が「それを正確に復唱する運動プログラムにアクセスできない」ため、何度も繰り返しながら正答に近づこうとします。
3. 反響言語
❌ 誤り。反響言語(echolalia)は、聞いた言葉をそのままおうむ返しする現象で、Wernicke失語や全失語など、理解が不良な場合に見られます。聴覚的理解が良好という本問の条件に矛盾します。
4. 再帰性発話
❌ 誤り。再帰性発話(recurrent utterance)は、意図しない同じ言葉を繰り返し発する症状で、全失語や重症Broca失語で見られます。本問で「自発話流暢」という条件と相容れません。
5. ジャルゴン
❌ 誤り。ジャルゴン(jargon)は、Wernicke失語に特徴的な意味不明の造語や新語造成で、理解障害を伴います。本問の「聴覚的理解良好」という基準では見られません。
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【試験対策ポイント】
失語症の復唱障害の鑑別(3軸で整理)
| タイプ | 自発話 | 理解 | 復唱 | 特徴的な随伴症状 |
|---|---|---|---|---|
| **伝導失語** | 流暢 | 良好 | 著しく不良 | **接近行為**(選択肢2) |
| Broca失語 | 非流暢 | 良好 | 不良 | 発語失行・努力的発話 |
| Wernicke失語 | 流暢 | 不良 | 不良 | 反響言語・ジャルゴン |
| 全失語 | 非流暢 | 不良 | 不良 | 再帰性発話 |
| 超皮質性運動失語 | 非流暢 | 良好 | **良好** | 復唱は保たれる |
伝導失語の復唱障害は「理解―言語出力のルートの遮断」:
- 聴覚的理解が良好→言葉の意味理解は問題なし
- 自発話が流暢→表出の基本的能力は保持
- 復唱が不良→「聞いた音→運動性出力」のダイレクト経路が障害
接近行為の臨床的意義:
- 「間違いを自覚している」証拠(無自覚な反響言語やジャルゴンとは異なる)
- 患者の試行錯誤的修正努力が可視化される行動
- 伝導失語の診断根拠となる重要な臨床徴候