第16回 言語聴覚士国家試験 第92問
小児聴覚障害第16回
前言語期の高度難聴児の学習課題として適切なのはどれか。
a.単文の理解
b.表出語糞の拡大
c.構文構造の習得
d.愛着関係の形成
e.意図的発声の促進
1. a,b 2. a,e 3. b,c 4. c,d 5. d,e
正答:5番
解説
■ 正答:5番 — d.愛着関係の形成 e.意図的発声の促進
前言語期は「言語獲得以前」の段階(生後0~12ヶ月)であり、この時期の高度難聴児に対する学習課題は「コミュニケーション基盤の構築」に焦点を当てます。愛着関係の形成と意図的発声の促進は、言語発達に先行する音声・非音声コミュニケーション能力の発展を支援するため、前言語期の最優先課題です。一方、単文理解や構文習得は言語期以降の課題であり、この段階では時期尚早です。
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【各選択肢の解説】
a. 単文の理解
❌ 誤り。単文の理解は言語期(12ヶ月以降)の課題であり、前言語期(0~12ヶ月)には該当しません。高度難聴児は音声言語による理解習得が困難なため、この時期に文法構造の理解を求めることは不適切です。
b. 表出語彙の拡大
❌ 誤り。表出語彙の拡大は言語期(特に1~2歳)の課題です。前言語期はまだ意味のある言葉を産出する段階ではなく、喃語や意図的発声などの前駆的音声活動が中心となります。
c. 構文構造の習得
❌ 誤り。構文構造の習得は就学前~学童期以降の高度な言語課題です。前言語期の難聴児にとって複雑な文法学習は発達段階に不適切であり、優先順位が極めて低いです。
d. 愛着関係の形成
✅ 正しい。愛着関係(ボンディング)の形成は全ての乳幼児にとって最基礎的な発達課題であり、聴覚障害児であっても優先度は同じです。親子間の情動的相互作用(視線接触、身体接触、表情交換)を通じて、後の社会性・コミュニケーション意欲の基盤となります。
e. 意図的発声の促進
✅ 正しい。意図的発声(purposeful vocalization)は、音声を使った対人的な意図表現の基盤です。前言語期の高度難聴児に対して、生音や補聴・人工内耳を活用した音声経験を増やし、発声そのものに対する報酬性を高めることは、後の音声言語習得につながる重要な課題です。
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【試験対策ポイント】
発達段階と学習課題の対応関係:
| 発達段階 | 時期 | 優先課題 | 具体例 |
|---|---|---|---|
| 前言語期 | 0~12ヶ月 | 愛着形成・意図的発声 | 視線交換・音声への反応促進 |
| 初期言語期 | 12~24ヶ月 | 語彙基盤・初語促進 | 喃語から有意語への移行 |
| 言語拡大期 | 24ヶ月~ | 語彙拡大・2語文習得 | 表出語彙50→200語へ |
| 言語精密化期 | 3~5歳 | 構文習得・敬語使用 | 単文→複文理解・産出 |
高度難聴児指導における時間軸の誤り(頻出誤り):
- a, b, c のような言語課題を前言語期に求める=発達段階の無視
- d, e は「音声言語習得の足がかり」として機能する基礎的課題
- 補聴・人工内耳装用後の聴取環境整備も同様に前言語期から開始
関連概念:
- 喃語発達:難聴児は喃語の発展が停滞しやすい(年3~6ヶ月の遅延