第16回 言語聴覚士国家試験 第94問
成人聴覚障害第16回
老人性難聴について正しいのはどれか。
- 1.低音の耳鳴を伴いやすい。
- 2.まれに顔面神経麻痩を生じる 。
- 3.大きな音を聞くと、めまいを生じる。
- 4.聴力低下に比べて言葉の聞き取りの悪化の訴えが多い。 ✓
- 5.時に騒音下で言葉の聞き取りが改善する現象がみられる。
正答:4番
解説
■ 正答:4番 — 聴力低下に比べて言葉の聞き取りの悪化の訴えが多い。
老人性難聴は純音聴力低下よりも言葉の理解度低下が顕著に起こります。これは加齢に伴う高音周波数の聴神経線維減少と、中枢聴覚処理能力の低下が同時に進行するためです。患者の日常的な訴えは「聞こえる音量は低下しているが、それ以上に言葉が聞き分けにくい」となり、聴力検査の結果と自覚症状が一致しないという特徴的なギャップが生じます。
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【各選択肢の解説】
1. 低音の耳鳴を伴いやすい。
❌ 誤り。老人性難聴は高音周波数(通常4000Hz以上)の感音難聴であり、低音域の聴力は比較的保持されます。耳鳴も高音域(高周波)を伴いやすく、低音耳鳴ではありません。低音耳鳴はむしろメニエール病など別疾患の特徴です。
2. まれに顔面神経麻痺を生じる。
❌ 誤り。老人性難聴は蝸牛の加齢変化(蝸牛神経節ニューロンの脱落・高周波帯域の感覚細胞喪失など)に限定された病態であり、顔面神経(VII)を侵襲する機序はありません。顔面神経麻痺を伴う難聴はRamsay Hunt症候群など限定的な疾患です。
3. 大きな音を聞くと、めまいを生じる。
❌ 誤り。老人性難聴による聴力低下では大きな音への過敏反応(不快感は生じるが)めまいは伴いません。音刺激によるめまい(音響刺激性めまい、Tullio現象)はむしろ外リンパ瘻や三半規管瘻など機械的な前庭障害が原因です。
4. 聴力低下に比べて言葉の聞き取りの悪化の訴えが多い。
✅ 正しい。老人性難聴の病理学的特徴は高周波帯域の聴神経線維脱落にあり、音量検出(純音聴力)と言語音の周波数弁別能(音声理解)が乖離します。特に騒音環境では、低周波雑音に隠された高周波音声(子音など言語情報)が聞き分けられず、医学的聴力低下度以上に言語理解が困難になります。
5. 時に騒音下で言葉の聞き取りが改善する現象がみられる。
❌ 誤り。老人性難聴患者は騒音下ではさらに言語明瞭度が低下します(カクテルパーティー効果の喪失)。騒音下で言葉の聞き取りが改善する現象(自動増幅効果:内耳の圧音反応が正常で、逆に音が大きくなると相対的に感度が上がる)はむしろ補聴器の指標(リクルートメント現象)であり、老人性難聴の自然経過ではみられません。
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【試験対策ポイント】
老人性難聴の特徴(高音周波数優位感音難聴)
| 特徴 | 内容 |
|---|---|
| 原因 | 蝸牛神経節ニューロン脱落(高周波帯優位) |
| 聴力パターン | 高音漸傾型(4000Hz以上の急峻な低下) |
| 言語理解との乖離 | 聴力に比べて言語明瞭度が悪化 |
| 騒音環境での影響 | さらに悪化(カクテルパーティー効果喪失) |
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