第28回 言語聴覚士国家試験 第98問
成人聴覚障害第28回
難聴者のコミュニケーションストラテジー指導で誤っているのはどれか。
- 1.少しゆっくり話すよう話し手に要請する。
- 2.自分が難聴であることを会話の相手に伝える。
- 3.聞こえにくい状況では書字で会話内容を確認する。
- 4.親しい人との会話中は聞こえがあいまいでも相づちを打つ。 ✓
- 5.聞き取りが不確実な場合は聞こえた部分を繰り返し、内容を確認する。
正答:4番
解説
■ 正答:4番 — 親しい人との会話中は聞こえがあいまいでも相づちを打つ。
難聴者のコミュニケーションストラテジー指導は、話し手と聞き手が相互に協力して聞き取り精度を高めるためのスキルです。**あいまいなまま相づちを打つことは、実は聞こえていないのに聞こえているふりをしてしまい、その後の会話の齟齬や誤解を招く危険性が高い**ため、指導上は推奨されません。親しい人相手だからこそ、正確なコミュニケーションを取ることが重要です。
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【各選択肢の解説】
1. 少しゆっくり話すよう話し手に要請する。
✅ 正しい。話話速度を低下させることで、各音素の聞き分けや文節の認識がしやすくなります。これは重要なストラテジーです。
2. 自分が難聴であることを会話の相手に伝える。
✅ 正しい。相手が難聴者であると認識することで、話し手は自動的に音量・速度・はっきり度などを調整しようとします。コミュニケーション環境の構築に不可欠です。
3. 聞こえにくい状況では書字で会話内容を確認する。
✅ 正しい。音声情報補完の重要なストラテジーです。特に騒音環境や電話など聞き取りが困難な場合に有効です。
4. 親しい人との会話中は聞こえがあいまいでも相づちを打つ。
❌ 誤り。**これは指導対象外、むしろ不適切な対応**です。あいまいな理解のまま相づちを打つことで、実は聞こえていない状況を隠蔽してしまい、後の会話の内容不一致や対人関係のトラブルを招きます。正確なコミュニケーションを取ることが基本です。
5. 聞き取りが不確実な場合は聞こえた部分を繰り返し、内容を確認する。
✅ 正しい。「部分的に聞き返す(parrot back)」は確認的手法として有効です。聞こえた部分を繰り返すことで、話し手が不足部分を補足し、正確な情報共有が実現します。
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【試験対策ポイント】
**「コミュニケーションストラテジー」の5つの主要カテゴリ**:
| カテゴリ | 具体例 | 効果 |
|---|---|---|
| **修復戦略(修復技法)** | 聞き返す・繰り返させる・書字確認 | 聞き落とした情報を補完 |
| **予防戦略** | 前置き(「野球の話です」など)・自分が難聴と伝える | 聞き取り困難な状況を事前に軽減 |
| **対話者への要求** | ゆっくり話す・大きく話す・はっきり発音 | 入力信号の質を向上 |
| **環境調整** | 雑音の少ない場所を選ぶ・背景音を減らす | 信号雑音比(SN比)改善 |
| **非言語コミュニケーション** | 相手の口元を見る・身振り手振りを活用 | 視覚情報で音声情報を補完 |
**特に試験で狙われる誤解**:
- 「親しい人相手なら聞こえなくても大丈夫」という誤った認識→**むしろ親しい関係だからこそ正確なコミュニケーションが必須**
- 「難聴者は積極的に相づちを打つべき」という誤解→**実は不正確な相づちはリスク**
**加齢性難聴・騒音性難聴の難聴者向け指導の実務**